乳牛における揮発性脂肪酸(VFA)のエネルギー利用効率

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要約

乳牛におけるVFA混合液のエネルギー利用効率は、VFA組成には大きく影響されなかったが、維持のための利用効率および増体のための利用効率とも乾草給与時より濃厚飼料多給時の方が高かった。また、維持のために要する代謝エネルギー量は485KJ/kg0.75・dayであり、VFA混合液の産乳のための利用効率は63.9%であった。

  • 担当:畜産試験場・栄養部・栄養第1研究室
  • 連絡先:0298-38-8655
  • 部会名:畜産
  • 専門:動物栄養
  • 対象:乳用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

反芻家畜による飼料エネルギーの利用効率は、一定ではなく飼料の種類により変化することから、飼料エネルギーの利用効率を高める基本条件を明らかにすることが求められる。一方、反芻家畜の主要なエネルギー源は、第一胃内で産生されるVFAである。また第一胃内のVFA組成は、給与飼料の種類により影響されることが知られている。 そこで本研究では、飼料エネルギーの利用効率の差を第一胃内VFA組成との関連で明らかにするために、維持の半量または維持量の基礎飼料を給与して第一胃内発酵を維持した乾乳牛の第一胃内に3種のVFA混合液(酢酸:プロピオン酸:酪酸=2:7:1, 4.5:4.5:1, 7:2:1)を維持の半量注入して、維持の半量~維持水準および維持~維持の1.5倍水準におけるVFAのエネルギー利用効率について検討した。また泌乳牛を用いて、産乳時におけるVFAのエネルギー利用効率についても検討した。

成果の内容・特徴

基礎飼料として、イタリアンライグラス乾草ウェハーのみ(H)、またはイタリアンライグラス乾草ウェハーと配合飼料を3:7~4:6の割合(HC)で給与した乾乳牛および泌乳牛にVFA混合液を注入した場合のME摂取量とエネルギー出納量(TEB)との関係を図1および2に示した。

  • 乾乳牛に基礎飼料として乾草のみを給与した時のVFA混合液のエネルギー利用効率は、52.5%(TEB<0)および44.4%(TEB>0)であった(図1)。
  • 乾乳牛に基礎飼料として乾草と配合飼料を給与した時のVFA混合液のエネルギー利用効率は、57.2%(TEB<0)および52.9%(TEB>0)であった(図1)。
  • VFA混合液の利用性は、基礎飼料が乾草のみの場合には酢酸の割合が高い場合に、また、配合飼料多給時にはプロピオン酸の割合が高い場合に高まる傾向を示した。
  • 維持に要するME量は、485KJ/kg0.75・day(115kcal/kg0.75・day)であった(図1)。
  • 乳生産のためのエネルギーの利用効率は、63.9%であった(図2)。

以上の結果から、有意ではないがVFAの利用効率は基礎飼料により影響され、また、エネルギー摂取水準が維持以上と維持以下で異なる傾向を示した。このことから、給与飼料の組み合わせによってVFAの利用性をさらに改善できる可能性が示唆された。

成果の活用面・留意点

飼料のエネルギー利用性を検討する際の基礎飼料となる。

具体的データ

図1 乾乳牛のME摂取量とエネルギー出納量との関係

図2 乳牛のME摂取量とエネルギー出納量との関係

その他

  • 研究課題名:第一胃内環境が反芻家畜のエネルギー代謝に及ぼす影響の解明
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成元~5年度
  • 発表論文等:Efficiency of energy utilization of volatile fatty acids by
                      mature cattle given a hay or high-concentrate diet. Proceedings
                      of 13th Symp. on Energy Metabolism. Europ. Associ. Anim.
                      Produc., 76, p171-174 (1994)