LC発振回路による簡易な個体識別装置

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要約

LC発振回路に金属マーカやLCマーカが近づくと発振回路の共振周波数が低下し、発振が停止して個体を識別する乾電池仕様の簡易な個体識別装置を検討した。試作した識別装置の検出距離は、金属マーカの場合34~94mm、LCマーカの場合130~270mmの範囲を示し、これらの有無で識別できることを明らかにした。また、検出コイルの巻き数や径、金属マーカの面積、LCマーカの巻き数や径の検出距離への影響を明らかにした。

  • 担当:畜産試験場・飼養技術部・施設利用研究室
  • 連絡先:0298-38-8678
  • 部会名:畜産、草地
  • 専門:飼養管理
  • 対象:乳用牛・肉用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

わが国の酪農は、生産コストの低減化と労働生産性の向上を実現するためフリーストール方式の導入が進んでいる。しかし、フリーストール方式を導入している酪農家の約5割は一群管理をしており、個体毎の栄養管理が難しく、栄養の過不足が生じる問題が指摘されている。そこで、一群管理における合理的な個体管理システムを創出するため、乾電池仕様による簡易な個体識別装置を試作し、その検出特性を明らかにした。

成果の内容・特徴

  • 検出コイルの巻き数と径による影響:コイル径120mm、一次コイル(5~30巻き)、二次コイル(20~170巻き)において、一次側20巻き、二次側110巻きで検出距離が高い傾向を示した。コイル径120~230mmの範囲において、コイル径が大きくなると検出距離が若干低下する傾向を示した。
  • 金属マーカの形状及び面積による影響:円盤、四角盤、○リング、△リングの検出距離は、検出コイル径120~230mmにおいて34~94mmの範囲にあった。マーカ形状の影響は小さく、マーカ面積が増加するに従い検出距離が増大する傾向を示した(図1)。
  • LCマーカのコイルの巻き数や径による影響:検出装置の発振周波数と同調するLCマーカの検出距離は金属マーカに比べて大幅に改善され、130~270mmの範囲を示した。LCマーカのコイルの巻き数(10~100巻き)や径(40~90mm)が増加するに従い検出距離が増大する傾向を示した(図2、3)。
  • 水平移動特性:金属マーカ、LCマーカとも検出コイル中心線上から検出コイル径の1/4程度までは同程度の検出距離を示したが、その後、検出距離が減少する傾向を示した(図4、5)。
  • 角度特性:金属マーカ、LCマーカとも、傾斜角度30°程度までは同程度の検出距離を示したが、30°以上では検出距離が低下し、60°以上で急激に減少する傾向を示した(図6)。

成果の活用面・留意点

  • 試作した乾電池仕様の個体識別装置の検出特性は、簡易な個体識別装置を検討する基礎資料となる。
  • 一群管理における個体別給餌システムを検討するための基礎資料となる。
  • 個体識別装置を組み込んだドアフィーダシステムによる給餌管理システムの検討を進める必要がある。

具体的データ

図1 金属マーカの種類と検出距離

図2 LCマーカの巻き数の影響

図3 LCマーカの直径の影響

図4 金属マーカの水平移動特性

図5 LCマーカの水平移動特性

図6 LCマーカの角度特性

その他

  • 研究課題名:一群管理における個体管理システムの検討
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成6年度(平成5~8年度)