音声による子豚の吸乳行動の制御
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要約
授乳中の豚の母子の音声を録音し、豚房内に設置したスピーカーから一定の間隔で繰り返し再生することによって、子豚の吸乳行動を制御する方法を開発した。この方法を哺乳期間中に継続すると、子豚の吸乳回数増加および損耗防止の効果が認められた。
- 担当:畜産試験場・飼養技術部・生体情報利用研究室
- 連絡先:0298-38-8675
- 部会名:畜産
- 専門:飼育管理
- 対象:豚
- 分類:研究
背景・ねらい
現在、養豚農家において、生まれた子豚の1割程度が、哺乳期間中に圧死等により損耗すると言われており、飼養管理上の問題が残されている。さらに、子豚の離乳時の体重が小さいと、その後の肥育段階で問題になる。そこで、哺乳期間中の子豚の損耗防止と発育向上を目的として、豚の音声による子豚の吸乳行動の制御を試みた。
成果の内容・特徴
- 豚の母子の授乳時の音声をテープレコーダーに録音し、豚房内に設置したスピーカーから40分間隔で1分間ずつ繰り返し再生した(60dB)。用いた音声は、子豚が乳を求める鳴き声、子豚の吸乳音および授乳時の母豚の鼻声を含んだ音であり、音声は分娩日から子豚の離乳まで4週間続けた。経産豚を用い、4頭を試験区、4頭を対照区とした。
- 子豚の1日当たりの吸乳回数は、哺乳期間を通じて試験区が対照区に比べ有意に多かった(図1)。
- 子豚の吸乳間隔のばらつきと頻度は試験区と対照区で明らかに異なり音声の効果が認められた。試験区では、吸乳間隔41~50分が54%と過半数の頻度を占めた。対照区では、吸乳間隔41~50分が32%と最大の頻度を占め、吸乳間隔は正規分布を示した(図2)。
- 試験区では離乳まで子豚の損耗がなかったのに対し、対照区では9%の子豚が損耗した。また、離乳時の子豚の平均体重は試験区の方が重い傾向だったが有意差は認められなかった(表1)。
- 豚の行動に対する音声の悪影響は、特に認められなかった。
成果の活用面・留意点
哺乳豚の管理における新しい技術として利用できる可能性があるが、今後、生産現場で用いるための装置などの技術開発が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:子豚の行動計測および解析に関する研究
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成6年度(平成4~8年度)
- 発表論文等:1)音声による子豚の吸乳行動制御、第88回日本畜産学会大会講演要旨,
p265 (1994)
2)音声による子豚の吸乳行動制御─隣接豚房における同期特性─、日
本家畜管理研究会誌, 30 (1), p4-5 (1994)