ガンマ線照射による刺さないミツバチの作出

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要約

ガンマ線を照射した女王バチの子および孫に、刺針システムに異常を起こした「刺さな いミツバチ」が出現した。また、発育段階である蛹化時期にガンマ線を照射した場合、羽化してくるミツバチのほとんどが「刺さないミツバチ」となった。この手法を用いることにより、「刺さないミツバチのコロニー」を作ることができる。

  • 担当:畜産試験場育種部育種第3研究室
  • 連絡先:0298-38-8626
  • 部会名:畜産
  • 専門:育種
  • 対象:蜜蜂
  • 分類:研究

背景・ねらい

ミツバチは巣の創設時から大規模なコロニーを形成するため、最も効率良く維持・管理されやすい花粉媒介性昆虫である。しかし、ミツバチは強い刺傷性を持つため、一般農家によるコロニーの維持・管理はあまり行われていない。そこで、人に優しい(gentle)あるいは全く刺さないミツバチの開発が強く望まれている。

成果の内容・特徴

  • ガンマ線照射により、刺針システムの壊れた「刺さないミツバチ」が実際に得られた(写真1)。20~50Gyのガンマ線を照射した6コロニーの女王バチの子および孫に「刺さないミツバチ」が現れた(出現率:0.5~1.0%)。したがって、この「刺さない」形質は遺伝すると考えれる。
  • 個体の発生時期(蛹化が起こる産卵後9日目)に30Gyのガンマ線を照射すると、ほとんどが「刺さないミツバチ」となった(出現率:97%、(図1)。この形質の遺伝性は不明。
  • 2の方法で、人工的に「刺さないミツバチ」のコロニーが造られた。このコロニーは花粉媒介性昆虫として利用可能。
  • 2の方法で、「刺さない女王」が得られた。
  • 「刺さないミツバチ」の刺針(sting)は、それを構成している2種の針(中心針(stylet)および外套針(lancets)が分散しており、「刺す」機能を喪失している。さらに、毒液を注入するための弁(valv)も分散しているため毒液を送ることもできない。

成果の活用面・留意点

「刺さないミツバチ」のコロニーは、働きバチだけの人工的なコロニーであり、その利用期間は概ね1ヶ月ほどと想定できる。「刺さないミツバチ」の系統の作出には、1の手法により交配・選抜を行うとともに、2,4の遺伝性が明らかとなれば、系統作出効率が高まるものと期待される。

具体的データ

写真1.通常のミツバチの刺針(左)と刺さないミツバチの刺針(右)

 

図2.卵から蛹期の各固体にガンマ線処理をした場合の成虫羽化頻度

 

その他

  • 研究課題名:人工受精技術を用いた高次真社会性昆虫の育種
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(平成7~9年度)
  • 発表論文等:
    1)新聞発表(平成7年11月22日)
    2)日本昆虫学会・日本応用動物昆虫学会合同大会(1996))