乳酸菌グルタミン酸脱炭酸酵素の新規精製法
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要約
Lactococcus lactis の産生するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)の精製を妨害するタンパ
ク質に対するモノクローナル抗体を作製した。この抗体を利用したアフィニティークロマトグラフィによりGADの簡便な精製法を確立した。
- 担当:畜産試験場加工部加工第1研究室・畜産物規格鑑定研究室
- 連絡先:0298-38-8685
- 部会名:畜産
- 専門:加工利用
- 対象:細菌
- 分類:研究
背景・ねらい
γ-アミノ酪酸(GABA)は、タンパク質が分解してできるアミノ酸の1種であり、血圧降下作用などの機能性が注目されている。チーズでは、熟成中に雑菌によって生成することが多いため、製品には含まれないことが望ましいとされている。しかし、正常な熟成をしたチーズにもGABAが確認され、スターター乳酸菌のグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)により生じると考察される。チーズ中での乳酸菌によるGABAは生成を明らかにするには、乳酸菌GADを単離し、作用特性を解明することが必要である。これまで乳酸菌GADの単離精製を試みたが、夾雑するタンパク質を完全に除くことはできなかった。そこで、本研究では、GADに対するモノクローナル抗体を作成し、GADの高度精製法を確立することを目的とした。
成果の内容・特徴
- Lactococcuslactis01-7株の菌体抽出液より硫安塩析・疎水クロマト・イオン交換・ゲルろ過クロマトグラフィーにより精製したGADの部分精製標品を抗原として、モノクローナル抗体を作製した。
- 抗原には陽性なクローン10株(IgG1が3クローン、IgGb2が1クローン、IgMが6クローン)は、ウェスタンブロッティングの結果、いずれも抗GAD抗体ではなく、これまでGADから分離することができなっかた夾雑タンパク質に対する抗体を産生していた(図1)。
- 夾雑タンパク質に対するモノクローナル抗体M3-A(サブクラスIgG1)を用いてアフィニティーカラムを作製し、GADの精製に供した(図2)。
- GAD活性は作製したアフィニティーカラムに吸着されたが、0.35MNaC1の画分に溶出された。一方、精製の障害であった夾雑タンパク質は0.30MNaC1画分に溶出され、GADと分離することができた(図3)
- このGAD活性画分をウルトラフリー30で円心濃縮後、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ゲルを2mm幅で切り出し、GAD活性を測定した(図4)。この結果GAD活性と一致する位置に単一なバンドを得ることができた。
成果の活用面・留意点
- 作製したアフィニティーカラムを用いて夾雑タンパク質を取り除くことにより、これまでの精製方法に比べ乳酸菌GADを簡便に精製することが可能となる。
- 電気泳動法によりGADが単一なバンドとして得られる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:乳酸菌グルタミン酸脱炭酸酵素の精製と遺伝子クローニング
- 予算区分:科振調(重点基礎)
- 研究期間:平成7年度(平成7年度)
- 発表論文等:抗Phosphoglucose isomerase(Lactococcus lactis)モノクローナル抗体作製と簡便な精製法の確立.第91回日本畜産学会大会(1996)