サイレ-ジ用とうもろこし一代雑種親自殖系統「Na28」の育成

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要約

「Na28」(エヌエイニジュウハチ)は、カリビア型フリント種でやや晩生に属し、ごま葉枯病と黒穂病に対する抵抗性、耐倒伏性及び組合せ能力に優れた自殖系統である。サイレ-ジ用とうもろこしのF1品種育成のための親系統として利用できる。

  • 担当:草地試験場・育種部・育種第2研究室
  • 連絡先:0287-37-7551
  • 部会名:草地・育種
  • 専門:育種
  • 対象:飼料作物類
  • 分類:普及

背景・ねらい

わが国における環境適応性が高く、優れた特性を有する国産F1品種の育成には、優良F1親自殖系統の育成が不可欠である。自殖系統にとって耐倒伏性、耐病性とともに組合せ能力は最も重要な形質である。そのためデント種自殖系統と組合せ能力の高いとされているフリント種を母材として耐倒伏性、耐病性に優れた自殖系統の育成を目指す。

成果の内容・特徴

  • 20のカリビア型フリント種の日本在来品種から育成された合成集団を病害抵抗性について1サイクル循環選抜を行った改良集団JF1C1を母材とし、各種病害抵抗性と耐倒伏性等について選抜と固定により育成したフリント種自殖系統である。昭和63年、S6のとき「Na28」と命名され、以後自殖ときょうだい交配で維持されている。
  • 生態的特性:早晩性は「やや晩生」に属する。ごま葉枯病抵抗性は「強」、紋枯病抵抗性は「中」、黒穂病抵抗性は「強」で、耐倒伏性は「強」である(表1、2)。
  • 形態的特性:稈長は約160cm、着雌穂高は約80cm、稈径は約1.5cmで、いずれも「中」である。草型はセミアプライト型である。雌穂は「先端円錐型」で、粒列はほぼ10列である。粒は「黄色」で、「丸型」である(表1)。
  • 組合せ能力:一般及び特定組合せ能力が高い。「Na28」とデント種自殖系統との間の単交雑の乾物収量、TDN収量は流通F1品種より多い(表3)。
  • 採種性:種子収量は25kg/a程度である。花粉飛散程度は「やや良」である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 種苗登録申請を行っており、サイレ-ジ用とうもろこしF1品種の親系統として利用できる。
  • 紋枯病、モザイク病が中~やや弱であるので、単交配組合せはこれらの特性が優れた自殖系統との組合せが望ましい。採種性はデント種に比べて高くないので花粉親としての利用が望ましい。

具体的データ

表1.「Na28」の一般生育特性と採種性

 

表2.「Na28」の耐病性と耐倒伏性

 

表3.「Na28」を片親とする単交雑と流通F1品種との比較

 

 

その他

  • 研究課題名:飼料用とうもろこしF1品種の育種(F1親自殖系統の育成)
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成7年度(昭和57年~平成7年)
  • 発表論文等:井上康昭、望月昇、濃沼圭一、加藤章夫、トウモロコシのカリビア型フリントF1親自殖系統Na30の育成とその特性、草地試研報、47号、1993