トールフェスクとイタリアンライグラスの体細胞雑種における稔性個体の分離

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

細胞融合によるトールフェスクとイタリアンライグラスの不稔の雑種からキメラ的に両親のいずれかに酷似した個体が分離した。これらはすべて稔性があり、ミトコンドリア遺伝子の解析や根の蛍光反応により雑種性の保持が確認された。

  • 担当:草地試験場・育種部・育種工学研究室
  • 連絡先:0287-37-7553
  • 部会名:草地・育種生物資源・細胞育種
  • 専門:バイテク
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

トールフェスクの広域適応性とイタリアンライグラスの高品質性を合わせ持つ雑種を細胞融合により作出する。体細胞雑種は核だけでなく細胞質遺伝子も雑種である可能性が高く、交配では作出不可能な新素材として育種への利用が期待される。

成果の内容・特徴

  • トールフェスクとイタリアンライグラスのプロトプラストを電気的に融合させ、ヨードアセトアミドによる細胞膜の不活化と再分化能の有無を組合わせた選抜により20個体の体細胞雑種を得た。
  • これらは両親の中間的外観を示し、イネのリボソームDNAをプローブとして核DNAレベルでの雑種性が確認されたが、染色体数は予想された数である両親の染色体数の和とはならず、不稔だった。しかしながら、これら不稔の体細胞雑種の半数近くの個体からキメラ的に両親のいずれかに酷似した分けつ茎が発生し(写真A、表)、それらは酷似した方の親の花粉により多数種子を結実した(写真B)。
  • イタリアンライグラスに酷似したキメラ由来個体のあるものはトールフェスクのミトコンドリアDNAを保持していた(写真C)。トールフェスクに酷似したキメラ由来個体の花粉母細胞の減数分裂(写真D)は20組の2価染色体と1つの1価染色体を示し、またイタリアンライグラスの特徴である根の蛍光反応を示した(写真E)。

成果の活用面・留意点

  • 片親の遺伝子が一部だけ導入されたトールフェスクとイタリアンライグラスの属間雑種(フェストロリウム)育種のための素材として活用される。
  • これら雑種性の遺伝的追跡が必要である。

具体的データ

写真.A-E

 

表.体細胞雑種からキメラ的に分離した個体の外観の型

 

その他

  • 研究課題名:細胞融合による高品質・広域適応性イネ科牧草の作出
  • 予算区分:特別研究(バイテク植物育種)
  • 研究期間:平成7年度(平成5年~平成7年)
  • 発表論文等:Takamizo, T. and G. Spangenberg(1994) Somatic hybridization in Festuca and Lolium. In Biotechnology in Agriculture and Forestry Vol. 27, pp. 112-131. (ed.Y.P.S. Bajaj) Springer -Verlag Berlin Heidelberg