雄性不稔イタリアンライグラス×トールフェスク属間F1雑種の生産力と適地

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

雄性不稔イタリアンライグラスにトールフェスクを交配した属間F1雑種の生産力検定を草地試験場で4年間行った結果、最も生産力の優れた系統では平均で 186kg/aの乾物収量を示した。またそのデータを元にシミュレーションを行った結果、西南暖地を含む広い地域で150kg/a以上の生産力を示すと推 定された。

  • 担当:草地試験場・育種部・育種工学研究室草地計画部・造成計画研究室
  • 連絡先:0287-36-0111
  • 部会名:草地・育種
  • 専門:育種
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

イタリアンライグラスとトールフェスクの長所を合わせ持つ属間雑種品種を育成する場合、一般的に、F1の染色体倍加や戻し交雑により、種子稔性の回復を図っている。しかし、後代での染色体数の変異、稔性の低下のため、今のところ主要品種になっていない。そこで雄性不稔イタリアンライグラスを利用した、新しいタイプの属間雑種品種の開発を目的として、得られたF1雑種系統についてその能力を検定するため、生産力検定とシミュレーションによる各地気象条件下での生産力の推定を行った。

成果の内容・特徴

  • F1雑種の4年間の乾物収量の平均は167.6kg/aで、トールフェスクの平均174.5kg/aよりも少ないが、F1雑種で最も高い収量を示した系統Aは186.5kg/aでトールフェスクの平均よりも高い(表1)。
  • F1雑種は利用1年目ではトールフェスクよりも高い乾物収量(184.2kg/a)を示しており、利用1年目からトールフェスクの2年目の収量と同程度の収量が確保できる(表1)。
  • F1雑種の乾物収量は花粉親として用いたトールフェスク品種の影響を受けており、収量の少ないヤマナミを花粉親に用いるとそのF1雑種の収量は少なくなる。また組み合わせによっては、花粉親として用いたトールフェスクの収量よりも高くなる場合があった(表2)。
  • 生産力検定のデータをニューラルネットワークの手法(草地飼料作研究成果最新情報第8号p.77)に適用し、F1雑種系統Aの気象生産力を推定した結果、系統Aは西南暖地を含む広い地域で150kg/a以上の生産力を示すと考えられた。

成果の活用面・留意点

  • F1雑種は、生産力・永続性の面から考えてトールフェスクに近い能力を有しており、西南暖地で利用できる牧草として有望である。
  • 各地域の正確な生産力については系統適応性試験が必要である。また、このF1雑種の大量採種の方法はまだ確立していないので、今後、雄性不稔維持系統を含め、稔性・採種の研究を推進する必要がある。F1雑種の品質についてはp25参照。

具体的データ

表1.トールフェスクとF1雑種の乾物収量

 

表2.F1雑種の乾物収量への花粉親の影響

 

図1.シミュレーションによる系統Aの気象生産力と適地の推定

 

 

その他

  • 研究課題名:
    トールフェスク・イタリアンライグラス雑種作出のための両親系統の組織培養利用技術
    フェストロリウム(F1雑種)の環境適応性の解析
    フェストロリウムF1植物の生産力の推定
  • 予算区分:科・重点基礎・経常
  • 研究期間:平成7年(平成元年~7年)
  • 発表論文等:
    1.フェストロリウムF1植物の気象生産力の推定日草誌42(別)1996
    2.トールフェスクとイタリアンライグラスとの属間雑種のF1利用.
    3.利用4年目までの生産力検定.日草誌42(別)1996