雄性不稔イタリアンライグラス×トールフェスク属間F1雑種の品質

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要約

雄性不稔イタリアンライグラスにトールフェスクを交配したF1属間雑種はトールフェスクと比較して乾物分解率だけでなく牛の嗜好性についても優れている。

  • 担当:草地試験場・育種部・育種工学研究室生態部・生態システム研究室
  • 連絡先:0287-36-0111
  • 部会名:草地・育種
  • 専門:育種
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

雄性不稔イタリアンライグラスにトールフェスクを交配したF1雑種の品質を検定するために、乾物分解率および嗜好性(ホルスタイン種を用いたカフェテリア方式および黒毛和種を用いた放牧条件下での採食頻度試験)を調査した。

成果の内容・特徴

  • トールフェスクとF1雑種の乾物分解率を比較すると、季節的な変動はあるもののF1雑種の方が常に高く、平均で比較すると3%程度高い分解率を示した(表1)。
  • F1雑種系統間では、乾物分解率が高いトールフェスク品種を花粉親として用いた方が乾物分解率が高くなる傾向があった。
  • ホルスタインを用いてカフェテリア方式によって調べた採食率は、1番草では差がないが、夏期の4番草ではF1雑種がトールフェスクの約3.3倍高い採食率を示した(表2.)。
  • 黒毛による放牧条件下での採食頻度試験は、季節による変動があり、トールフェスクの方が順位が高い場合もあったが、総合するとF1雑種の方がトールフェスクよりも良い順位を占めた(表3)。

    以上のことより、F1雑種は乾物分解率が高く、刈取給与、放牧のいずれの場合においても牛の嗜好性がトールフェスクよりも高いと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 雄性不稔イタリアンライグラスを利用したF1雑種は、乾物分解率および嗜好性が高い寒地型牧草として利用可能であると考えらる。
  • このF1雑種の大量採種の方法はまだ確立していないので、今後、雄性不稔維持系統を含め、稔性・採種の研究を推進する必要がある。F1雑種の生産力についてはp23参照。

具体的データ

表1.トールフェスク、F1雑種の乾物分解率

 

表2.ホルスタインを用いたカフェテイリア方式による採食率

 

表3.黒毛を用いた放牧条件下での採食頻度試験による嗜好性の順位

 

その他

  • 研究課題名:トールフェスク・イタリアンライグラス雑種作出のための両親系統の組織
    培養利用技術
    フェストロリウム(F1雑種)の環境適応性の解析
    フェストロリウムF1植物の放牧適性
  • 予算区分:科・重点基礎・経常
  • 研究期間:平成7年(平成元年~7年)
  • 発表論文等:トールフェスクとイタリアンライグラスとの属間雑種のF1利用
    I.利用1年目の生産力検定および品質評価日草誌40(別)1993
    II.利用2年目の生産力検定および品質評価日草誌40(別)1993