泌乳牛の咀嚼時間と飼料成分、採食量、及び乳成分との関係

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要約

単位乾物摂取量当たりの採食・反芻合計咀嚼時間は自由採食量、乳量と負の相関関係にあるが、乳脂率とは正の相関関係にあり、3.5%乳脂率を維持するため に必要な粗飼料の物理性を咀嚼行動を指標にして示せば、咀嚼時間は34分/kg・DM、 660分/日、咀嚼回数は45,000回/日、必要と推定された。

  • 担当:草地試験場・飼料生産利用部・乳牛飼養研究室
  • 連絡先:0287-37-7806
  • 部会名:草地・飼料利用
  • 専門:動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

単位摂取量当たりの咀嚼時間は乳牛に必要な飼料の物理特性を表現する有効な手段として利用されつつある。そこで、咀嚼行動が泌乳牛において生産と密接に関連している採食量、及び乳量、乳成分とどの様な関係にあるのかを解明する必要がある。

成果の内容・特徴

粗飼料の給与割合(10-100%)、種類(イネ科牧草1-3番草、アルファルファ、豆皮等)を様々に組み合わせた完全混合飼料(TMR)給与条件下で飽食させた泌乳牛延べ118頭(分娩後6-43週、1産-9産、)の咀嚼行動と採食量、飼料成分、乳量、乳成分を測定し、乾物1kg当たりの採食・反芻合計咀嚼時間(分/kg・DM、RVI)と生産に関与する要因との相関関係について調べた。

  • 1日当たりの採食・反芻合計咀嚼時間はRVIが60分/kg付近までは増加するが、それ以上になると900分/日前後で安定する傾向を示した(図1)。
  • RVIと乾物摂取量との間には高い負の相関関係があり、1分/kg毎に168g摂取量が低下する関係式が得られた(図2)。
  • RVIと摂取飼料成分との関係ではNDF含量と最も高い正の相関が得られた(表1)。
  • RVIと乳成分との関係では乳脂率と相関が高く(表1)、乳脂率(%)=0.0173×RVI+2.90(r=0.38,n=118)の関係式が得られた。測定牛全体でのRVIと乳脂率との相関係数は個体間差が大きいため比較的低い値に留まっているが、測定数が6例以上得られた泌乳牛(分娩後6-20週)の個体別のRVIと乳脂率との関係(図3)では、いずれの個体も極めて高い正の相関係数を示しており、乳脂率と咀嚼時間は密接に関連していることがうかがえる。
  • イネ科牧草のRVIはナイロンバッグ法による48時間第一胃内不消化割合(%、X1)と平均切断長(mm、X2)とにより次の推定式で表現された。
    RVI=(46.1+1.46X1)×(0.602+0.186logX2)
    RVIとX1(r=0.99,n=5)、RVIとlogX2(r=0.99,n=4)
  • 咀嚼回数から咀嚼時間への変換式も次式で表現される。
    一日当たり咀嚼時間(分/日)=141.1+0.0117X(一日当たりの咀嚼回数、回/日)、
    r=0.92,n=115
    RVI(分/kg・DM)=4.9+12.8X(乾物1g当たりの咀嚼回数、回/g・DM)
    r=0.94,n=115

成果の活用面・留意点

  • 簡易咀嚼回数測定器等を併用することにより、粗飼料の過不足を容易に判断することが可能になり、乳脂率の調整等に利用できる。
  • 遺伝的に大きく異なる乳成分を有する群または品種では当該関係式は直接応用できない。

具体的データ

図1.一日当たりの咀嚼時間と単位摂取量当たりの咀嚼時間との関係 図2.乾物摂取量と咀嚼時間との関係

 

表1.泌乳牛の摂取飼料成分及び乳成分とRVIとの相関係数

 

図3.乳脂率と咀嚼時間との関係

 

その他

  • 研究課題名:咀嚼行動に基づく粗飼料の物理特性評価法の開発
  • 予算区分:高品質輪作
  • 研究期間:平成7年度(平成3-7年)
  • 発表論文等:Oshio S., Ando S. and Shioya S. (1994) A simple apparatus for counting the number of chewing in cattle. JARQ 28:247-252.