開放型畜舎の懸垂型送風機による水分環境制御
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要約
フリーストール開放型牛舎において床面の敷料・ふん尿表面における水の対流物質伝達率を気流速の関数で表し、水分環境制御を行うための懸垂型送風機の最適
設置方法を検討した。設置角度は45°、設置間隔は送風機直径の4~6倍が最適であり、設置要因には設置高さは、関係しないことを明らかにした。
- 担当:畜産試験場・飼養技術部・施設利用研究室
- 連絡先:0298-38-8678
- 部会名:畜産、草地
- 専門:飼育管理
- 対象:家畜類
- 分類:指導
背景・ねらい
フリーストール牛舎では含水率の高いふん尿が通路に貯留しており、舎内が湿潤となっている。このためふん尿処理が問題になっているほか、床が滑りやすい状態になっており、肢蹄病や乳房炎等の主な原因とされている。そこで床面の乾燥を促進し、畜舎内水分環境を効果的に制御するため、床面からの水分移動を定量化し、懸垂型換気扇の最適設置方法について検討した。
成果の内容・特徴
-
風洞実験によって籾殻が混入したふん尿(含水率79%)と生ふん尿(含水率85%)表面における水の対流物質伝達率を求めた。
籾殻・ふん尿混合 |
hD=0.00687×100.119U |
(r=0.92) |
---- (1) |
生ふん尿 |
hD=0.00715×100.0835U |
(r=0.80) |
---- (2 |
ここで、 hD:対流物質伝達率(m s-1) U:気流速(m s-1)
籾殻が混入している場合は、生ふん尿よりも対流物質伝達率が大きく、水分をとばしやすいことが判明した(図1)。
- 床面からの水分流束は以下の式から求めることができる。
m=hD(Xw-X∞)ρ----(3)
- m:水分流束(kg mv-2 s-1)
- XW:ふん尿表面温度の飽和絶対湿度(kg kg'-1)
- X∞:空気の絶対湿度(kg kg'-1)
- ρ:乾き空気の密度(kg m-3)
- 床面での気流の速度尺度を懸垂型送風機設置の評価指標とした。噴流理論を適用し、(4)式の次元解析を行った。
um=f(Mo,ρ,H,r) -(4)
- um:床面の気流分布の最大値(m s-1)
- M0:噴流理論における運動量(N)
- ρ:空気の密度(kg m-3)
- H:送風機高さ(m)
- r:送風機からの距離(m)
UCum-1 ∝ r R-1 ----(5)
- UC:送風機初速度(m s-1)
- R:送風機の直径(m)
(5)式より速度尺度(左辺)と長さ尺度(右辺)の関係を得る。これより送風機の設置高さは設置要因とならないことが明らかになった。
- 送風機軸と水平面との角度が45°の場合は他の角度(90°、30°)と比較して速い気流速を最も長い距離に渡って床面に与えることができ、送風機を並べることで気流速を一定にすることができた(図2)。送風機を45°傾けた場合の設置間隔は送風機直径の4~6倍が望ましいことが判明した。
成果の活用面・留意点
- フリーストール牛舎内の環境制御を行う上での設計資料として使用できる。
- ふん尿表面における対流物質伝達率は、ハウス乾燥等におけるふん尿処理での計算にも使用できる。
- 籾殻以外の敷料の場合には、敷料・ふん尿混合物の対流物質伝達率が異なるため、新たに求める必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:畜舎内の水分環境の解明と制御技術の開発
- 予算区分:特別研究(高品質乳)
- 研究期間:平成6年~8年
- 発表論文等:
1)フリーストール牛舎における敷料・ふん尿表面の水分伝達係数、平成7年度農業施設学会大会講演要旨、454-455(1995)
2)直下型換気扇の気流性状、平成7年度農業施設学会大会講演要旨、446-447(1995)