北関東におけるススキ型およびアズマネザサ型放牧地の植物生産量
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
那須地方で放牧利用されるススキ型およびアズマネザサ型草地の地下部を含む純一次生産量は乾物でそれぞれ1164、764g/m2、地上部では714、811g/m2であり、寒地型牧草に匹敵したが、主な採食部位である葉部生産量は寒地型牧草の1/3から1/2であった。
- 担当:草地試験場・生態部・生態システム研究室
- 連絡先:0287-37-7228
- 部会名:永年草地・放牧
- 専門:生態
- 対象:牧草類・野草類
- 分類:研究
背景・ねらい
ススキやアズマネザサなどの野草類は、わが国在来の主要な家畜飼料資源である。一方、地球環境問題から草地の炭素収支が問われている。これら野草が放牧利用されている条件での純一次生産量を測定し、畜産利用する際や炭素収支算出の基礎資料を得る。
成果の内容・特徴
- ススキ型およびアズマネザサ型放牧草地の植物生産量を、寒地型放牧草地と比較し示した。対象野草地の放牧牛は黒毛和種繁殖牛であり、ススキ型草地ではススキの維持をはかるために6月と秋の2回、アズマネザサ型草地では5月下旬から11月上旬までの輪換放牧であり、年間約200ないし180CD/haの放牧がなされた。ここで、CD/haは牛体重を500kgに換算した延べ放牧頭数である(表1、2)。
- 純一次生産量の算出は、ケージ内外差の積み上げ法による。地上部については枯死部の消失量を加算したが、地下部については加算していない。
- ススキ型草地、アズマネザサ型草地の地上部純生産量は乾物で、それぞれ714と811g/m2、地下部純生産量はそれぞれ450と-47g/m2であった。その合計である純一次生産量は1164と764g/m2であり、寒地型牧草に匹敵する値であった。しかし、家畜の主要な採食対象である葉部生産量は、ススキ型、アズマネザサ型草地でそれぞれ260と320g/m2であり、地表ないし5cm以上の草量を可食部とした寒地型牧草生産量の1/2-1/3であった(表2)。
- 純一次生産における、生育期間(4から10月)の日射エネルギーの利用効率は、牧草で0.60から0.72%であるのに対し、アズマネザサ型草地で0.68%、ススキ型草地で0.73%であった(表3)。
成果の活用面・留意点
- 北関東で放牧利用されている、ススキ型草地とアズマネザサ型草地の年間の乾物生産量の基礎データとなる。
- ススキ型草地の放牧は、ススキを維持する条件での値である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:放牧草地におけるエネルギーと物質の流れの季節的変化
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成7年度(昭60~平7年)
- 発表論文等:築城幹典・塩見正衛・小山信昭・秋山侃・高橋繁男・奥俊樹(1988、1993):草地動態に関する研究.第3次、第4次報告.草地試資料(62-13、平4-14)