アブ類の体温条件と飛翔能力の関係
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要約
アブ類の静止時の体温は気温とほぼ同じであった。日中活動する種類では飛翔可能な下限温度は高く、下限温度付近では飛翔速度が大きく低下したが、薄暮時にも活動する種類では低い気温から飛翔が可能で、気温による速度の差も少なかった。
- 担当:草地試験場・放牧利用部・家畜害虫研究室
- 連絡先:0287-37-7813
- 部会名:草地・永年草地・放牧
- 専門:生態
- 対象:昆虫類
- 分類:研究
背景・ねらい
アブ類の寄主探索・吸血行動において、気温・日射条件がその行動を規定する大きな要因の1つであると考えられ、放牧地等における防除を効率的に行うためには気象条件とアブの行動の関係を明らかにすることが必要である。このため寄主探索・吸血行動において重要な役割を果たす飛翔能力とこれらの要因との関係を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 微細な熱電対を用いてアブ各種について気温と体温の関係を調べた結果、静止時の体温は気温とほぼ同じであり、気温の変化にしたがって体温も速やかに変化した。
- アブ各種を金網ケージに入れ、気温を変化させ飛翔可能な下限を調べた結果、飛翔可能最低温度は日中活動するニッポンシロフアブ、フタスジアブでは18°C前後であったのに対し、薄暮時にも活動するウシアブ、ヤマトアブ、アオコアブでは13°C~16°Cと低かった(表1)。
- 飛翔可能な下限温度より体温が低い場合でも、日射ランプの照射を受けることにより体温が上昇し、羽ばたきが可能になった(図1)。しかし、日射がなくなると体温は低下し、羽ばたきを継続できなかった。
- フライトミルによる飛翔速度の測定の結果、日中活動するニッポンシロフアブ、フタスジアブでは、気温によって飛翔速度は大きく変化したが、薄暮時にも活動するウシアブ、アオコアブ、ヤマトアブでは、気温による飛翔速度の変化は少なかった(図2)。
- 日中活動する種類が、気温が飛翔可能な下限温度付近より数°C以上高い場合にしか吸血活動を行わないのは、下限温度付近では、たとえ日射により体温を上昇させることができても、寄主探索、吸血行動に十分な飛翔速度が安定して得られないためと考えられる。
成果の活用面・留意点
- アブ類の飛翔可能な気温の下限、及び気温による飛翔能力の変化が明らかになったことは、アブによる被害軽減技術に必要なアブ類の寄主探索・吸血行動を解明するための基礎的資料となる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:アブ類の体温条件と行動の関係解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成4~7年
- 発表論文等:
白石昭彦、アブの体温測定、日本昆虫学会第53回大会・第36回日本応用動物昆虫学会大会講演要旨
白石昭彦、アブ類の飛翔に及ぼす温度条件の影響、
日本昆虫学会第54回大会・第38回日本応用動物昆虫学会講演要旨