雑草種子の生存に及ぼす牛の消化作用と堆肥の発酵温度

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要約

ワルナスビ種子が混入した飼料を牛が採食すると、約60%の種子が生存したまま排出された。ワルナスビ種子を採食した牛のふんを戸外に置くと、種子の約15%が出芽した。堆肥化により雑草種子を死滅させるには、60°C以上の温度が必要。

  • 担当:草地試・草地生産基盤部・飼料基盤管理研究室
  • 連絡先:0287-37-7209
  • 部会名:草地・生産管理
  • 専門:雑草
  • 対象:(家畜類)
  • 分類:指導

背景・ねらい

近年、イチビやワルナスビなどの外来雑草が、飼料畑等で繁茂し、被害が広がっている。濃厚飼料に混入した雑草種子が牛に採食され、堆肥とともに飼料畑等 に散布されることで、外来雑草が蔓延している可能性が懸念される。そこで、牛ふん中の種子が飼料畑等に定着する可能性及び堆肥化による種子の死滅条件につ いて調査した。

成果の内容・特徴

  • オオムギ(飼料A)あるいはトウモロコシ(飼料B)にワルナスビ種子を混ぜて3頭ずつの牛に採食させた。糞からは約8割の種子が回収され、生存し たまま回収された種子は約6割に及んだ。また、牛のふんを底に穴のあいたプラスチック箱にいれ、草地に置くと、ふん中に有ると計算された種子の約15%が 出芽した(表1)。
  • 15種類の雑草種子を実験用堆肥槽に入れて、堆肥の温度と種子の発芽率を調査した。発芽した種数と堆肥中の最高温度との回帰直線を計算すると、57°C以上では全ての種が死滅すると推定された(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 雑草の侵入防止のための堆肥の腐熟温度の目安となる。
  • 種子の死滅温度は、種子が水分を含んだ状態でのみ適用可能。堆肥内の温度は、不均一なため十分な切り返しが必要。また、熱に対する種の反応は休眠状態などによって変化する。なお、水分を吸収した種子は、60°Cで3時間処理するとほぼ死滅する(野口・江川1994)。

具体的データ

表1 牛に採食されたワルナスビ種子のふんからの回収率、生存率及びふん中にあると計算された種子の出芽率(%)

図1 堆肥埋設中の最高温度と生存種数との関係

その他

  • 研究課題名:草地への強害新帰化植物の侵入・定着・拡散機構の解明
  • 予算区分 :特研(強害雑草)
  • 研究期間 :平成8年度(平5~8年度)
  • 研究担当者:西田智子・清水矩宏・尾上桐子・黒川俊二・原島徳一・石田元彦・伊吹俊彦
  • 発表論文等:西田智子・清水矩宏・原島徳一・黒川俊二・伊吹俊彦、堆肥中の雑草種子
                       の生死に及ぼす発酵温度の影響、雑草研究40(別I)、1995
                       T. Nishida, N. Shimizu, M. Ishida, T. Onoue and N. Harashima Effect
                       of cattle digestion and of composting heat on weed seed viability,
                       Proceedings of The 8th Anim. Sci. Con. of AAAP, 1996.