表層剥離損傷に対する生育初期の牧草の抵抗機能と引き抜き強度

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要約

牧草の引き抜き強度は播種後2か月で2kgfを越える。せん断抵抗と想定引き抜き抵抗(せん断面の牧草個体数×平均引き抜き強度)は相関があり、想定引き抜き抵抗が50kgf程度以上になると、安定した草地の高いせん断抵抗(1.2kgf/cm2)に近づく。

  • 担当:草地試験場・山地支場・草地土壌研究室、作業技術研究室
  • 連絡先:0267-32-2356
  • 部会名:草地・生産管理
  • 専門:土壌作業
  • 対象:牧草類
  • 分類:

背景・ねらい

大型作業機のスリップによる表層剥離損傷に対する牧草の抵抗機能は、せん断抵抗を指標として評価することができ、安定した草地のせん断抵抗はどの草種でも 1.2kgf/cm2と高い水準でほぼ一定となる。しかし、造成後の草地は牧草根が伸長してせん断抵抗が強化されるまで一定の期間を要し、掃除刈りを始め とする作業機の走行には細心の注意が必要である。そこで牧草播種後の物理的強度の推移を、牧草の引き抜き強度の測定により検討し、せん断抵抗と対比して増 資後の草地管理に役立てようとする。

成果の内容・特徴

  • き抜き強度の測定は、個体ごとの測定が可能であること、せん断抵抗測定のようにボク雄の株数や個体の大きさを揃えるなどの煩雑さがないことな ど、牧草の機械的強度を測定するのに簡便でよい方法であった。牧草の引き抜き強度は、個体の茎数、地上部重、一次根の発生数などの生育指標と密接な関係に あった(表1)、(図1) 。播種後3か月における牧草の根の発生数は、ペレニアルライグラスでは1茎あたり3~5本の一次根が、オーチャードグラスなどでは同じく5~7本の一次根が発生していた。
  • 牧草の引き抜き強度は、供試したペレニアルライグラス、オーチャードグラス、チモシー、トールフェスクの4草種とも播種後60日を過ぎ ると2kgfを越えた。ペレニアルライグラスの引き抜き強度は他の3草種に比べ2倍以上高い値で推移した。このような草種間差は、一次根の発生数、地上部 の乾物重、茎数などの生育の違いによるものと考えられた(表1)。
  • せん断抵抗(50cm2)に存在する牧草の引き抜き強度の合計値(想定引き抜き抵抗、せん断面に入る牧草個体数×平均引き抜き強度) とせん断抵抗とは相関があり、引き抜き強度と個体密度を測定すればおよそのせん断抵抗が推定できた。せん断面の牧草の個体数の多少にかかわらず、想定引き 抜き抵抗が50kgf程度以上になったとき、せん断抵抗は1.2kgf/cm2を越え、安定した草地のせん断抵抗に近づいた(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 黒ボク土の草地に適用できる。安定した草地の表層剥離抵抗については、草地飼料作研究成果最新情報第11号(平成7年度)を参照されたい。
  • 造成後の草地は土壌が膨軟であり、想定引き抜き抵抗が50kgf程度以上になっても、車輪の沈みが大きい場合には表層剥離が起こる可能性がある。

具体的データ

表1 草種別の引抜き強度、一次根数、地上部重の推移

図1 牧草の引抜き強度と茎数

図2 想定引抜き抵抗とせん断抵抗

その他

  • 研究課題名:傾斜草地の損傷に対する牧草及び土壌の抵抗機能の解明
  • 予算区分 :重点基礎、場プロ、経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成5年~8年)
  • 研究担当者:渡辺治郎、玉城勝彦、渋谷幸憲、小島 誠、瀬川 敬、村上弘治
  • 発表論文等:牧草根の作業機走行に対する抵抗機能(日土肥学会講要、第40集、1994)