牛スラリーの悪臭を軽減する土壌細菌

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

牛スラリー由来の悪臭成分を土壌カラムへ連続的に供給し、土壌カラム中に集積した微生物を分離した。分離した菌株を牛スラリーへ接種し、官能試験によって悪臭軽減能の高いバチルス属細菌を選抜した。選抜された菌株は、牛スラリー中の主要悪臭成分であるVFA(揮発性有機酸)と硫化水素を著しく減少させた。

  • 担当:草地試験場・生態部・土壌微生物研究室
  • 連絡先:0287-37-7227
  • 部会名:草地・生産管理
  • 専門:環境保全
  • 対象:微生物
  • 分類:研究

背景・ねらい

畜産業の規模拡大に伴い、家畜排泄物に由来する悪臭が深刻な問題となっている。こうしたふん尿由来悪臭を微生物の機能を活用することによって軽減する技術の開発が強く求められている。そこで、牛スラリー由来の悪臭を軽減する微生物を土壌から分離し、その性質を調べた。

成果の内容・特徴

  • 悪臭を軽減する微生物を土壌から分離するために、まず、悪臭成分による土壌の集積培養を行った。すなわち、乳牛ふん尿を固液分離後貯留したスラリーを用い、これを窒素ガスで通気し、悪臭成分を連続的に土壌を充填したカラムへ導入した(図1)。5日間の集積培養を行ったところ、このカラム土壌中には、平板培地(YG培地)上で粘液状のコロニーを形成する細菌群が優占して増殖していたため、これらを単離した。
  • 上記の単離菌株を、殺菌した希釈スラリーへ接種・培養し、無接種区を対照として官能試験を行った。その結果、明らかに悪臭軽減効果を示すバチルス属細菌MS5株が見出された(図2)。
  • MS5株は、スラリー中の主要悪臭成分であるVFA(揮発性有機酸)と硫化水素の濃度を著しく減少させた(図3)。また、MS5株は、硫黄系悪臭成分である硫化メチル、二硫化メチルを炭素源として生育することができた。これらのことから、MS5株の悪臭軽減能は、VFAおよび硫黄系悪臭物質の資化能によるものと考えられた。

成果の活用面・留意点

  • 微生物の機能を活用することによって家畜排泄物由来の悪臭を軽減するための基礎的知見として活用できる。
  • 本試験は、殺菌したスラリーへ接種したモデル試験であり、実用化に向けてはさらに多くの検討が必要である。

具体的データ

図1 牛スラリー由来の悪臭成分を土壌カラムへ連続的に通気する装置

図2 MS5株を殺菌した牛スラリーへ接種・培養した後の悪臭の軽減

図3

その他

  • 研究課題名:液肥における臭気発生機構の解明と関連微生物の解明
  • 予算区分 :総合的開発(家畜排泄物)
  • 研究期間 :平6~8
  • 研究担当者:斎藤雅典・(西本孝二・小柳 渉)
  • 発表論文等:土壌肥料学会講演要旨集 42:217,218(1996)他