家畜ふん尿貯留槽からのメタン発生量の把握と発生制御技術
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要約
家畜ふん尿貯留槽から放出されるメタン放出実態を明らかにした。その放出量低減化のための対策として、貯留前処理として曝気を行うと、メタン放出量を無処理で貯留した場合よりも、低減化させることができる。
- 担当:草地試験場 環境部 土壌物質動態研究室
- 連絡先:0287ー37ー7558
- 部会名:草地・生産管理・農業環境・地球環境
- 専門:土壌;肥料
- 対象:
- 分類:研究
背景・ねらい
メタン(CH4)及び亜酸化窒素(N2O)は、それぞれ二酸化炭素の約10倍、約250倍の温暖化効果をもち、近年の大気中濃度が問題視されている。一
方、我が国の家畜ふん尿の年間排出量は約90Mtといわれるが、現行の酪農経営では、ふんと尿を分離しないまま、貯留する事例が多い。
このような畜舎内外のふん尿貯留槽では、CH4が生成され、その全てを大気中に放出しているのが実状である。
そこでふん尿貯留槽からのCH4放出実態を調査し、その放出量の評価、さらに、N2O放出にも配慮した、CH4発生抑制技術の開発を試みた。
成果の内容・特徴
- 草地試近隣の酪農家のふん尿貯留槽について、CH4,N2Oフラックスの通年測定を行った結果、CH4は常時発生し、N2Oは時々発生しているこ
とを明らかにした。それらの年間放出量を当該貯留槽あたり920 CH4-C kg/year, 0.17 N2O-N kg/yearと見積もった。(表1)
- 従来型の貯留槽に、中間処理として、3種類の曝気,撹拌方法の導入を検討し、 CH4発生量の低減を図った(図1)。
検討したいずれの曝気方法でも、無処理(貯留)に比べれば、
CH4放出量が著しく低減したが、ポンプ循環曝気の場合はN2O放出量の増大を招いた。これは、生成した硝酸態窒素による脱窒が原因と考えられた。
水中ポンプ撹拌曝気、回転翼撹拌曝気による、貯留前の中間処理として曝気処理することが、CH4発生量低減に有効であった(図2)。
- 回転翼撹拌曝気処理について、通気量の検討を行ったところ、 CH4発生量は、無処理区に比べ、およそ1/8~1/4に低減し、N2Oは発生しなかった。 したがって、曝気による好気処理が、CH4発生量低減化に有効であることが示された。(表2)
成果の活用面・留意点
- 家畜ふん尿貯留槽からのCH4発生量の積算基礎資料及びCH4発生量低減化方法の開発に活用できる。
- 処理時期や容量等の異なる貯留槽、飼養頭数の異なる場合の適用は検討が必要である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:家畜ふん尿貯留槽からのメタン発生量の把握と発生制御技術の開発
- 予算区分 :一般別枠(地球環境)
- 研究期間 :平成8年度(平成5~8年)
- 研究担当者:渋谷 岳、山本克巳、近藤煕、野中邦彦