稲ホールクロップサイレージの発酵特性

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要約

稲ホールクロップサイレージの発酵特性は、pHの低下や乳酸の生成は緩やかで、酪酸の生成は調製後4日目頃から始まる。しかし、総窒素に占める揮発塩基態窒素の割合やエタノールの含有率は調製後7~14日目までの間に急激に高まる。

  • 担当:草地試験場・飼料生産利用部・乳牛飼養研究室
  • 連絡先:0287-37-7806
  • 部会名:草地・飼料利用
  • 専門:動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:研 究

背景・ねらい

稲ホールクロップサイレージは乳酸含量が少なく、酢酸や酪酸量は多いことが知られているものの、その調製期間中のpH、有機酸、揮発性塩基態窒素、エタ ノール含有率の動態に関する知見は乏しい。そこで、品種と生育ステージが異なる多収の稲を用いて稲ホールクロップサイレージを調製し、発酵特性を解析し た。

成果の内容・特徴

    北陸153号、北陸147号をそれぞれ糊熟期、黄熟期に刈取り後、2~3cmの長さに切断し、3のポリ容器に詰込み、1、4、7、 14、28および56日目に開封してpH、有機酸、揮発性塩基態窒素およびエタノール含有率を調べた。なお、用いた稲の乾物率、穂部割合および可溶性炭水 化物含有率(乾物%)は順に北陸153号糊熟期(38.5%、43.7%、11.4%)、黄熟期(36.4%、57.3%、16.3%)、北陸147号糊 熟期(33.3%、37.4%、9.6%)、黄熟期(32.6%、47.3%、11.2%)であった。
  • 北陸147号で調製したサイレージのpHは北陸153号で調製のそれと比較し、低く推移したが、いずれも緩やかに低下した(図1)。
  • 北陸153号で調製したサイレージの乳酸含量は極端に少なく、調製後56日後は0.06%であった。また、北陸147号のそれはやや高く、0.6%程度であった(図2)。
  • 酢酸の生成は調製後1日目から、また、酪酸の生成は調製後4日目から開始される(図3)、(図4)。
  • 総窒素に占める揮発性塩基態窒素の割合は調製後14日目までに急激に高まり、その後は緩やかに推移した(図5)。
  • エタノール含量は調製後7日目までに急激に高まったが、その後は減少した(図6)。
  • 以上のことから、稲ホールクロップサイレージの発酵特性は、一般にトウモロコ シなどで認められるそれと比べて緩慢な様相を示すことが 明らかとなった。また、系統や生育ステージによる発酵特性の違いは材料稲の乾物率、穂部割合、可溶性炭水化物含量などの差による可能性が考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 稲ホールクロップサイレージの発酵特性が明らかとなり、高品質のサイレージを調製する上での基礎資料となる。
  • 北陸147号、北陸153号とも黄熟期の刈取りは降雨の翌日であった。

具体的データ

図1 稲ホールクロップサイレージのpHの推移

図2 稲ホールクロップサイレージの乳酸含有率の推移

図3 稲ホールクロップサイレージの酢酸含有率の推移

図4 稲ホールクロップサイレージの酢酸含有率の推移

図5 稲ホールクロップサイレージのVBN/TN(%)の推移

図6 稲ホールクロップサイレージのエタノール含有率の推移

その他

  • 研究課題名:稲ホールクロップサイレージの発酵特性の解析
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成8年度
  • 研究担当者:永西 修、四十万谷吉郎(現;中国農業試験場)