夜間給餌による分娩時刻の制御と分娩周辺時の腟温の変化
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要約
分娩前肉用牛の腟温を連続測定したところ分娩約24時間前から腟温が急激に降下し、昼分娩牛は夜分娩牛に比べ夜間の腟温が高く保たれることが明らかになった。粗飼料多給の夜間給餌により、夜間の腟温が高く維持でき、76.5%の牛が昼に分娩した。
- 担当:草地試験場・放牧利用部・繁殖技術研究室
- 連絡先:0287-37-7810
- 部会名:草地・永年草地・放牧・畜産
- 専門:繁 殖
- 対象:家畜類
- 分類:研 究
背景・ねらい
夜間給餌は分娩時刻を昼に偏らせる傾向があることが報告され、安全で簡単な分娩制御方法として注目されているが、その機構はまだ解明されていない。そこ
で、分娩前の交雑種(黒毛和種×ホルスタイン種)雌牛の腟温を連続的に測定することによって、昼分娩(7:00~19:00)牛と夜分娩
(19:00~7:00)牛の膣温変化の違いを明らかにし、夜間給餌(1日1回18:00)における、昼分娩のための基礎的知見を得た。
成果の内容・特徴
- 妊娠牛(延60頭)の腟内に熱電対センサーを挿入・固定し、5分毎の平均腟温をデーターロガに記録させた。データーロガを用いて1週間以上の長期連続腟温測定が可能であった。同時にビデオ録画および観察により、分娩時刻を確認した。
- 給餌方法に関わらず、全牛で分娩約24時間前から腟温が平均0.5°C降下した(図1)。
- 隣接した房で分娩予定3~2週前から1日2回(11頭)と夜間(10頭)に給与(TDN中粗飼料が約 50%)した結果、給餌時刻以外
で腟温が上昇する個体がみられ、夜間給餌でも昼分娩に偏 ることはなかった。昼分娩牛ではいずれも夜分娩牛に比べ夜間の腟温が高く保たれる傾 向がみられ
た(図2)。
- 粗飼料の割合を増加(TDN中70%)し、分娩4~3週前から夜間給餌だけを行った試験では、給餌時刻以外で腟温が上昇する個体はみら
れず、夜間の腟温を高く維持することができ、供試牛17頭中13頭(76.5%)が昼に分娩した。また、1日2回給餌期間中では朝の給餌(8:30)から
深夜まで腟温が比較的高く、早朝(0:00~6:00)に低下する傾向があったが、夜間給餌に切り換えた直後から腟温が夜間に高く保たれ、昼間に低くなる
日内変動に転換する傾向がみられた(図3)。
成果の活用面・留意点
- 夜間給餌による分娩時刻の制御を行うにあたり、基礎資料として活用できる。
- センサーは腟壁に常に接するよう外陰部に固定し、断線していないか定期的に確認する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:肉用牛の分娩周辺時の生理・生態的変化の解明
- 予算区分 :経常
- 研究期間 :平成5年~8年(平成5年~9年)
- 研究担当者:青木真理、木村康二、鈴木 修
- 発表論文等:青木真理・鈴木 修、データーロガーシステムによる分娩前肉用牛の腟温連続測定と血
液中ホルモン濃度の変化について、日本繁殖生物学会86回大会、1994
青木真理・木村康二・鈴木 修、分娩前交雑種牛の腟温の変化におよぼす飼料
給与時刻の影響、日本繁殖生物学会89回大会、1996
青木真理、夜食わせると昼間産む?!-夜間給餌による分娩時刻制御方法-
Dairy Japan、1月号、1997