子豚が母豚の鼻声を識別する能力

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要約

T字型迷路を用いて,母豚の鼻声に対する子豚の接近行動を調べた。その結果,子豚は生後7日程度で,ほぼ全頭が自分の母豚の鼻声を識別するようになるが,生後1日で自分の母豚の鼻声を識別している子豚も認められた。

  • 担当:畜産試験場 生理部 神経生理研究室
  • 連絡先:0287-38-8644
  • 部会名:畜産
  • 専門:生理
  • 対象:豚
  • 分類:研究

背景・ねらい

母豚は授乳時に独特の鼻声を発することが知られている。この鼻声は子豚に授乳を知ら せ,子豚を母豚の乳房に集める機能があると考えられている。しかし,子豚が生後どれく らいで自分の母豚と他の母豚の鼻声を識別しているかは不明である。そこで,行動学的手 法を用いて,子豚が母豚の鼻声を識別する能カを調べた。

成果の内容・特徴

  • T字型迷路(図1)を用いて,生後1日から21日まで,子豚の母豚の鼻声に対する接近行動を調べた。子豚が自分の母豚の鼻声の方に接近し,迷路の出口まで到達した場合,子豚が鼻声を識別したと判定した。
  • 生後1日で,65%の子豚が自分の母豚の鼻声を識別したが,その識別率は統計的に有意ではなかった(表1)。
  • 生後7日以後は,子豚が自分の母豚の鼻声を識別する割合が極めて高くなった(P<0.001)(表1)。
  • 子豚が迷路の出日まで到達するのに要した時間は,子豚の日齢が進むにしたがって短くなった(表1)。この結果から,子豚の運動能力なども生後7日程度で一定レベル まで発達すると推察された。

成果の活用面・留意点

子豚の鼻声の識別能力に関する基礎知見であり,今後,鼻声は子豚の行動の制御(音声 による子豚の吸乳行動の制御,畜産研究成果情報,9,p51-52,平成7年7月参照)などに利用できる可能性がある。

具体的データ

図1 T字型迷路および実験装置の配置

表1 子豚が自分の母豚の鼻声を識別した割合および子豚がT字型迷路の出口に到達するのに要した時間

その他

  • 研究課題名:子豚の行動計測および解析に関する研究
  • 予算区分:経常
  • 研究期間 :平成8年度(平成4年~8年度)
  • 発表論文等:How early can piglets discriminate their sow's voice.8th AAAP Animal
                     Science Congress Proceedings,Vol.2,p960-961.(1996)