鶏排泄物からの悪臭発生は飼料の複雑な影響を受ける

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要約

飼料原料の違いやアミノ酸の添加によって,鶏の新鮮排泄物から発生するアンモニアおよびイオウ化合物類濃度は影響されたが,いずれの成分も飼料中成分含量との間に相関関係がみられない場合があった。このことから,飼料成分は悪臭成分の生成に生成基質としてだけでなく間接的にも影響を及ぼしていると考えられる。

  • 担当:畜産試験場 栄養部 上席研究官
  • 連絡先:0287-38-8657
  • 部会名:畜産
  • 専門:動物栄養
  • 対象:鶏
  • 分類:研究

背景・ねらい

飼料中の成分は悪臭物質の生成に影響を及ぼすと考えられるが、これまでに十分な検 討がされていない。そこで、飼料成分と悪臭物質の関係を検討し、養分要求量を満たし つつ悪臭発生の少ない飼料の開発に資する。 トウモロコシ・大豆粕を主体とする当場慣用飼料に大豆粕、ミートボーンミール、フェザーミール、魚粉を50%添加したもの、あるいは飼料用メチオニン、リ ジン、トレオニン、トリプトファンを2%添加したものを産卵鶏に給与し、新鮮排泄物から発生するガス中の臭気成分(アンモニア,揮発性脂肪酸,イオウ化合 物)濃度を測定した。

成果の内容・特徴

    アンモニア濃度は、リジン区およびトレオニン区が著しく高かった。次いで、トリ プトファン区、ミートボーンミール区およびフェザーミールの順であった。蛋白質飼 料原料においては、アンモニア濃度と不消化窒素含量との間に有意な正の相関関係が 認められた。
  • イオウ化合物類のうちメチルメルカプタンは、ミートボーンミール区とリジン区、 メチオニン区が多く、トリプトファン区が少なかった。硫化メチルは、リジン区が多 くトリプトファン区が少なかった。硫化水素は、ミートボーンミール区とリジン区が 多い傾向であった。
  • 揮発性脂肪酸のうちミートボーンミール区においてイソ吉草酸が多かった以外は試 験区間に大差はなかった。
  • これらのことから、飼料成分あるいはアミノ酸添加により、新鮮排泄物からの臭 気発生量は影響を受けることが明らかになった。しかし、リジン、トレオニン、トリプ トファンの窒素含量は大差ないにもかかわらず、アンモニア発生量はリジン区、トレオ ニン区がトリプトファン区に比べて明らかに多かった。また、リジンはイオウを含まず メチオニンはイオウを含んでいるにもかかわらず、リジン区がメチオニン区よりイオウ 化合物発生量が多い傾向を示したことから、飼料成分は悪臭成分の生成の基質としてだ けではなく、消化管の微生物叢への影響等、間接的にも複雑な影響を及ぼしていること が示唆された(表)。

成果の活用面・留意点

  • 養分要求量を満たしつつ悪臭発生の少ない飼料の開発するための知見である。
  • 鶏消化管内における悪臭成分の発生機構の解明が必要である。

具体的データ

表 産卵鶏排泄物から発生する臭気中のアンモニアおよびイオウ化合物類濃度

その他

  • 研究課題名:養鶏用飼料成分が悪臭物質生成に及ぼす影響解明と制御技術開発
  • 予算区分:総合的開発〔家畜排泄物〕
  • 研究期間 :平成8年度(平成6年~8年度)