全粒または蒸煮圧片処理したトウモロコシと大麦の成牛における飼料価値

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要約

トウモロコシおよび大麦の乾物,粗蛋白質およびデンプンの消化率は,蒸煮圧片処理によって改善される。特に,デンプンの消化率の上昇は顕著である。トウモロコシおよび大麦の可消化養分総量(TDN)は,全粒では71%および47%であり,蒸煮圧片では85および83%である。可消化エネルギー(DE)含量は,全粒では3.18および2.06 Mcal/kgDMであり,蒸煮圧片では3.66および3.63 Mcal/kgDMである。

  • 担当:畜産試験場 栄養部 反すう家畜代謝研究室
  • 連絡先:0287-38-8655
  • 部会名:畜産
  • 専門:動物栄養
  • 対象:乳用牛・肉用牛
  • 分類:指導

背景・ねらい

トウモロコシおよび大麦は,乳・肉用牛の濃厚飼料の主要な配合原料として利用されて いる。一方,両殻粒に対しては,畜産振興のために免税措置がとられてきた反面,食用 への横流れ防止策として圧片加工処理が義務づけられてきた。しかし,近年の厳しい畜産 経営下において、畜産物生産費の大きな部分を占める流通飼料費低減を目的として,1995年から両殻粒の全粒による単体飼料としての流通が認められた。現 在までに,両殻粒の圧片,ひき割り,扮砕などの加工形態別の飼料価値については,多くの研究蓄積があるが、全粒についての報告は少ない。そこで,本成果情 報では全粒の飼料価値を蒸煮圧片と比較することにより,定量的に明らかにすることを目的とした。

成果の内容・特徴

    ホルスタイン種乾乳牛に,乾物重量で60%のイタリアンライグラス2番乾草ウェハーと 乾物重量で40%の全粒トウモロコシ(デントコーン種),蒸煮圧片トウモロコシ(厚み:2.8~3.0mm)、全粒大麦または皮付き蒸煮圧片(蒸煮圧片)大麦(厚み:1.3~1.5mm)を給与して,それぞれの飼料価値を検討した。
  • トウモロコシおよび大麦の乾物消化率は,金粒ではそれぞれ69%および49%であり、蒸煮圧片ではともに83%であった。またデンプン消化率は,全粒ではそれぞれ73および48%であり,蒸煮圧片ではともに100%あった(表1)。
  • トウモロコシの可消化養分総量(TDN)および可消化エネルギー(DE)含量は, 全粒ではそれぞれ71%および3.18Mca1/kgDMであり,蒸煮圧片ではそれぞれ85%および3.66Mca1/kgDMであった。また,大麦の金 粒ではそれぞれ47%および2.06離ca1/kgDMであり.蒸煮圧片ではそれぞれ83%および3.63Mca1/kgDMであった(表1)。
  • トウモロコシおよび大麦のルーメンバッグ法による第一胃内乾物消失率(浸漬時間24時間)は,金粒では13%および7%であり,蒸煮圧片では65およぴ80%であった。 以上の結果から,全粒のトウモロコシおよび大麦は蒸煮圧片処理することにより、第一胃内における分解性が著しく高まり,飼料の消化管全体での消化率およびエネルギー価が高まることが定量的に示された。また,その程度はトウモロコシと比べ大麦で大きいことが示された。

成果の活用面・留意点

  • 濃厚飼料多給時には、消化率の低下を考慮する必要がある。
  • 自家配合する場合の参考資料となる。

具体的データ

その他

  • 研究課題名:反芻家畜のエネルギー代謝に及ぼす供給栄養素構成とその消化・吸収部位の影響
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成8年度(平成6~10年度)
  • 研究担当者:栗原光規,西田武弘,上田宏一郎,寺田文典-->
  • 発表論文等:1)全粒トウモロコシおよび全粒大麦の蒸煮圧片処理が乳牛における飼料価値に
                          及ぼす影響.畜試研報,(投稿中)
                       2)全粒および蒸煮圧片処理したトウモロコシまたは大麦の給与が乳牛の第一胃内
                         溶液の化学性状および微生物相に及ぼす影響.畜試研報,(投稿中)