脂肪酸カルシウムの給与によるメタン産生の抑制

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要約

牛に対してオレイン酸(C18:1)あるいはリノール酸(C18:2)を主体とする脂肪酸カルシウムを300~600g/日給与することにより,第一胃内発酵や消化率,泌乳成績に対して悪影響を及ぼすことなく,メタン産生量を抑制することができる。

  • 担当:畜産試験場 栄養部 反すう家畜代謝研究室
  • 連絡先:0287-38-8655
  • 部会名:畜産
  • 専門:飼育管理
  • 対象:乳用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

メタンは温室効果ガスの一つであり,反芻家畜からのメタン発生量が全世界での発生量 の16%に達していることから,反芻家畜からのメタン発生量を生産性の低下を招くことなく削減できる技術を開発する必要がある。反芻家畜のルーメンにおけ るメタン生成は,飼料の質・量及びルーメン発酵の条件によって変動するが、本研究では,飼料の消化性に対する影響が少なく,かつ,メタン産生の抑制が期待 できる脂肪酸カルシウムの給与による削減技術について検討した。

成果の内容・特徴

  • 乾乳牛に対して,2種類の脂肪酸カルシウム(LCFA-1(全脂肪酸に占めるC18:0,C18:1の割合が17%,65%),LCFA一 2(C18:0,C18:1,C18:2の割合が20%,40%,35%).)を300~600g/日投与したところ,乾物摂取量当たりメタン産生量は 13~15%,5~6L/日抑制された。しかし,脂肪酸カルシウムの種類による影響は明らかではなかった(表1)。
  • 脂肪酸カルシウム投与による飼料消化率,第一胃発酵,微生物 に対する影響は認められなかった(表1)。
  • 泌乳牛に対してLCFA‐2を含有する飼料を給与(脂肪酸カルシウムとして約500g/日)したとところ,生産性に影響を及ぼすことなく,乾物摂取量当たりのメタン産生量を6%,2L/日削減することができた(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 不飽和度の高い脂肪酸カルシウムは嗜好性が劣るので,利用に際しては馴致を十分に 行う必要がある。

具体的データ

表1 脂肪酸カルシウムの投与による乾乳牛におけるメタン発生量の抑制効果

表2 脂肪酸カルシウムの投与による泌乳牛におけるメタン抑制効果

その他

  • 研究課題名:家畜ルーメン内のメタン産生の制御技術の開発
  • 予算区分:一般別枠[地球環境]
  • 研究期間:平成8年度(平成5~8年度)
  • 発表論文等:1)山羊のメタン発生量に及ぼす脂肪酸カルシウム給与の影響
                          第90回日本畜産学会大会(1995)
                      2)Effect of feeding calcium salts of long‐chain fatty acids on
                          digestion,energy and nitrogen retention and some blood
                          parameters in goats and cows.第8回AAAP大会(1996)
                      3)Methane production and its dietary manipulation in ruminants.
                          第8回AAAP大会サテライトシンポジウム(1996)