我が国における泌乳牛の乳生産量とメタン発生量との関連性
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要約
泌乳牛からのメタン発生量は4%脂肪補正乳量から推定できる。また,近年わが国の4%脂肪補正乳量1kg当りのメタン発生量は大きく減少しており,1980年以降に生乳生産量が30%以上増加しているにもかかわらず,泌乳牛からのメタン放出量の増加は10%と試算された。
- 担当:畜産試験場 栄養部 反すう家畜代謝研究室
- 連絡先:0287-38-8655
- 部会名:畜産
- 専門:動物栄養
- 対象:乳用牛
- 分類:行政
背景・ねらい
近年,主要な温室効果ガスの1つであるメタンの大気中における濃度上昇が二酸化炭素
の濃度上昇と同様に大きな間題となっている。そのため,発生変動の要因解明とわが国に
おける発生量の把握が早急に求められている。一方,メタンの主要な発生源の1つと指摘されている反芻家畜からのメタン発生量の推定法および1992年におけるわが国における家畜からのメタン発生量については平成5年度畜産試験場成果情報で報告している。しかし,1.泌乳牛の生産性とメタン発生量との関連および
2.わが国からのメタン放出量の経年変化の解明はこれまで十分に行われていない。そこで,泌乳牛を用いて,この2点について検討した。
成果の内容・特徴
- 泌乳牛からのメタン発生量は4%脂肪補正乳(FCM)量の増加とともに増加するが,
単位FCM量当たりのメタン発生量は逆に減少し,以下の推定式が得られた(図1)。
Y=6.33+317/X(r=0.809**)
Y,FCM量1kg当たりのメタン発生量(l/kgFCM);X,FCM量(kg)
- 推定式から,泌乳牛の1日当たりFCM量が20から30kgに増加すると、メタン発生量は1日当たりでは16%増加するが、FCM量
1kg当たりでは23%減少することが明らかとなった。言い換えると,FCM量が20kgの牛群が生産する牛乳を30kgの牛群で生産することによりメタ
ン発生量を23%低減できることが示された(表1)。
- 前述の推定式とわが国の1961~1993年における生乳生産量,乳脂率および経産牛頭数を用いて泌乳牛からのメタン放出量の経年変化
を推定すると、1961,1980および1993年において年間4.3,11.6および12.8万トンと試算された。一方,各年次における年間生乳生産量
は211,650および863万トンであり,また,FCM量1kg当たりのメタン発生量は31,27および21ιと推定された。これらのことから,泌乳牛
からのメタン放出量は1961年以降1980年頃まで生乳生産量の増加とともに大きく増加したが,それ以降においてはFCM量1kg当たりのメタン発生量
が大きく減少したため,生乳生産量の増加割合33%に対してメタン放出量の増加割合は10%に抑制されていた(図2)。
成果の活用面・留意点
得られた回帰式は,国あるいは地域レベルで泌乳牛からのメタン放出量の年次変動や削
減目標などを泌乳能カとの関係から明らかにする際に活用できる。乾乳牛からのメタン放
出量推定には、平成5年度畜産試験場成果情報で示した回帰式を用いる必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:反芻家畜におけるメタン及び亜酸化窒素放出とその変動要因の解明に
- 関する研究
- 予算区分:経常.環・地球環境(メタン等対策)
- 研究期間:平成8年度(平成7~9年度)
- 研究担当者:栗原光規,寺田文典.西田武弘,上田宏一郎-->
- 発表論文等:1)Methane production and its dietary manipulation in ruminants.
Pfoc.of Sate11ite Symp.of 8th AAAP " Rumen Microorganisms,
digestion ctivity in Ruminants",p19(1996)
2)Changes in methane emission from dairy cattle in Japan during
recent 33 years.Proc.8th lnt'1 Conf.on Anaerobic Digestion,(1997)