家畜排泄物の堆肥化過程からの臭気発生を調べるための実験系
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要約
実験室規模の堆肥化試験装置を開発し,家畜排泄物の堆肥化過程から発生する臭気の厳密な測定が可能となった。臭気成分のうち,アンモニアと硫黄化合物類は品温の推移と連動して増加・減少し,低級脂肪酸類は堆肥化初期に急激に減少することを定量的に示した。臭気指数は堆肥化初期および切り返し後の品温の高い時期に高く,アンモニア・硫黄化合物類が臭気の主体であることを明らかにした。
- 担当:畜産試験場 飼養環境部 汚染物質浄化研究室
- 連絡先:0287-38-8677
- 部会名:畜産
- 専門:環境保全
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
家畜排泄物の堆肥化の過程からは極めて高濃度の臭気が発生し、畜産由来の主要な悪臭
源となっている。この臭気発生への対策を考えるうえで、臭気の特徴や変化を把握する必
要がある。しかし、屋外での堆肥化処理では発生した臭気は直ちに拡散するため、正確な
定量評価は困難である。また、堆肥化を行うためには数百kg程度の素材が必要であり、取り扱いに大きな手間がかかる。そこで、20kg程度の規模で堆肥化試験を行える装置を開発した。また、その実用例として豚ぷんの堆肥化過程から発生する臭気の推移を調べた。
成果の内容・特徴
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(図1)に示した半密閉・通気式の堆肥化試験装置を作製した。構造的には円筒形の充填槽の周囲を断熱材で覆ったもので、10~20kgの素材を充填し通気すること
で、外部からの加温無しに堆肥化が可能である。通気は充填槽の下部から行い、上部から排気する。排気口に導管を設置することで、拡散希釈無しに臭気を採
取・分析しうる。
- この装置を用いた豚ぷんの堆肥化試験の例を示す。副資材を加えて含水率を約65%に調整した豚ぷん(約20kg)を装置に充填して毎分2.5ι(素材1m3当たりでの換算で約50ι)の通気を行った。1週間毎に切返しを行い、4週間で終了とした。
- 開始時より品温は急激に上昇し、各切り返し毎に上昇・下降した。アンモニアおよび
硫黄化合物類の濃度は品温の推移とほぼ連動して増加・減少した(図2)、硫黄化合物類としてはメチルメルカプタン濃度を示した)。低級脂肪酸類は開始時より急激に減少し、1日以内にほぼ不検出となった(図3)。
臭気指数は開始時より品温の上昇とともに上昇した。また、切返し後の高品温時には高い値を示した(図4)。以上のことから、アンモニアと硫黄化合物類が、堆肥化処理に由来する臭気の主体であることが示された。
成果の活用面・留意点
- 堆肥化試験装置は小規模での堆肥化試験が可能であり、堆肥化に関する研究に応用し
うる。また、臭気の厳密な測定が行えることから、臭気対策技術の評価に活用しうる。
- 堆肥化過程から発生する臭気はアンモニアと硫黄化合物類が主体であり、臭気対策に
おいて、これらの発生低減が重要であることを示した。
- 堆肥化試験の際の通気量は、充填素材1m3当たりでの換算で毎分50~60ι程度が適当である。装置外気温が20°C以下の場合は、開始後の品温上昇が遅れ気味となる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:微生物を利用した無臭コンポスト化技術
- 予算区分:総合的開発研究(家畜排泄物)
- 研究期間:平成8年度(平成6~11年度)
- 発表論文等:1)家畜排泄物堆肥化に伴う臭気の軽減技術の開発(第1報)
実験室規模の堆肥化試験装置を用いた実験系の作出.
第88回日本畜産学会大会(1994)
2)Emissions of malodorous compounds and greenhouse gases from
composting swine feces.Bioresouce Technology, 56,p265-271(1996)