ウシ妊娠関連糖タンパク質の胎盤における遺伝子発現と妊娠期の血中濃度

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要約

ウシの妊娠関連糖タンパク質(PAG)の遺伝子は、妊娠26日令の胎膜で既に発現が認められ、妊娠初期から末期までの間、胎盤で発現していることがPCR 法で確認された。末梢血中のPAGは妊娠20日前後から検出され、妊娠が進むにつれてその濃度が著しく増加してゆき、分娩時に最高値に達することが明らか になった。

  • 担当:畜産試験場 繁殖部 生殖内分泌研究室
  • 連絡先:0298-38-8633
  • 部会名:畜産
  • 専門:繁殖
  • 対象:乳用牛肉用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

妊娠関連糖タンパク質はアスパルティックプロテアーゼファミリーに属するタンパク質で、胎盤で産生されて末梢血中に出現する。このタンパク質は生理作用が未解明であるが、妊娠期の末梢血中に検出されることから、胎盤機能の評価指標となり得るものと期待されている。 本研究では、妊娠各時期の胎盤組織におけるPAG遺伝子の発現を検索するとともに、妊娠初期から末期までの血中PAG濃度の消長を調べた。

成果の内容・特徴

  • PAGの遺伝子発現は、妊娠26日の胎膜に既に認められ、妊娠末期まで発現が継続する。発現は胎盤の絨毛叢と子宮小丘に認められるが、子宮内膜上皮や粘膜下織には認められない(図1)(図2)。
  • 末梢血中のPAGは妊娠20日前後に約1ng/mlの濃度で検出され、妊娠の経過とともに漸増し、分娩の約20日前から急増して、分娩日には1~2μg/mlの濃度に達する(図3)。
  • 単胎と双胎妊娠牛を比較すると、双胎妊娠牛の方が血中PAG濃度が高く、分娩直前の上昇がより急激である(図3)。

成果の活用面・留意点

胎盤ではアスパルティックプロテアーゼファミリーに属する複数のPAG様分子が発現している事を考慮すると、今回RIAでPAGとして測定された分子の中にもPAGに類似したアスパルティックプロテアーゼファミリー分子が含まれていた可能性がある。

具体的データ

図1.妊娠26日令の胎膜におけるPAG遺伝子の発現 図2.妊娠270日令のPAG遺伝心の発現

図3.ウシの妊娠中の血中PAG濃度の消長

その他

  • 研究課題名:胎盤形成及び妊娠維持に関わる生理活性物質の解明
  • 予算区分:総合的開発研究(繁殖技術)
  • 研究期間:平成9年度(平成7~9年度)
  • 発表論文等:
    1) Effect of fetal mass, number and stage of gestation on pregnancy specific protein B concentrations in the bovine.Theriogenology 44 827-833 (1995)
    2) Plasma bovine placental lactogen concentration throughout pregnancy in the cow; relationship to stage of pregnancy, fetal mass, number and postpartum milk yield. Domestic Animal Endocrinology 13(4) 351-359 (1996)
    3) Plasma bovine pregnancy-associated glycoprotein concentrations throughout gestation in relationship to fetal number in the cow. European Journal of Endocrinology 137 423-428 (1997)