食肉加工品のアレルゲン性に及ぼすつなぎおよび原料肉の影響
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要約
食肉加工品に対する食物アレルギーには、つなぎとして製造時に使用される、牛乳タンパク質や鶏卵タンパク質が原因で引き起こされる場合がある。また、原料肉の種類によってはアレルギー反応を低く抑えられる可能性が示された。
- 担当:畜産試験場 加工部 畜産物機能開発研究室
- 連絡先:0298-38-8687
- 部会名:畜産
- 専門:加工利用
- 対象:家畜類
- 分類:指導
背景・ねらい
食肉・食肉加工品に対するアレルギーは、食物アレルギーのうちでも鶏卵、牛乳に次いで発症頻度が高いとの報告がある。しかし一方では、食肉アレルギーの問題はほとんどないと考える臨床医もいる。本研究では、このようなくい違いの原因が、食肉加工品に対する理解が十分でないことに起因するものと考え、その原因を明らかにして、より低アレルゲン性の食肉加工品開発のための基礎知見を得ることを目的とした。
成果の内容・特徴
- 牛乳および鶏卵タンパク質をつなぎとして製造したモデルソーセージについて、その水溶性抽出物と、牛乳・ 鶏卵アレルギー患者血清のIgE抗体との反応性を化学発光ELISAにより測定したところ、高い反応性が認められ、添加タンパク質はアレルゲン性を失っていなかった。このことは、食肉加工品に対するアレルギーには、つなぎタンパク質に対するものも含まれていることを示している (図1)。
- 牛乳・鶏卵タンパク質に感受性が高いアレルギー患者は、必ずしも食肉に対しても反応性が高いとは限らない(図1)。
- つなぎではなく、食肉成分に対して過敏なアレルギー患者のIgE抗体は、家兎および七面鳥肉を原料肉として用いた加工品に対する反応性が牛肉などと比較して低い(図2)。
成果の活用面・留意点
食物アレルギー患者は複数の食物に対して感受性が高い場合が多く、それぞれの患者について、原因となる食物に応じた低アレルゲン化食品が必要とされる。本研究では、食肉アレルギーといわれる患者には、つなぎに対して反応する患者もいることが示され、牛乳・鶏卵等のつなぎを用いない食肉加工品の開発の重要性が明らかにされた。 また、牛乳・鶏卵アレルギー患者の場合、牛肉および鶏肉の摂取を控えるよう医師に指導されることがあるが、必ずしも、その必要はないことがわかった。 さらに、家兎や七面鳥肉等、原料肉を工夫することによる、低アレルゲン化食肉加工品の開発が有望と思われた。 ただし、今回低アレルゲン性が認められた家兎および七面鳥肉の場合も、継続摂取により、新たな反応誘起の可能性があることにも留意する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:食品蛋白質に対する免疫応答機構
- 予算区分:大型別枠( 生物情報 )
- 研究期間:平成9年度 (昭和63~平成9年度)
- 発表論文等:
1) Specificity of IgE antibodies from allergic patients sensitive to meat products.
43th Int. Congr. Meat Sci. Technol. Congr. Proc. 766-767 (1997)
2) 畜産物に対する RAST陽性食物アレルギー患者IgE抗体の特異性解析.
第92回日畜学会講演要旨 P118 (1997)
3) 食物アレルギーに対応した食肉ソーセージの開発. 第44回日食科工学会大会講演集 P186 (1997)
4) 食肉ソーセージに対するIgE抗体反応性-卵・ 牛乳・ 肉 RAST陽性アレルギー患者血清を用いた検討-.
日本アレルギー学会春期臨床大会, アレルギー 46(2・3) P276 (1997)
5) 食肉とアレルギー. 食肉の科学 38(2) 213-217 (1997)
- 共同研究:日本ハム(株)中央研究所、国立療養所南福岡病院