ソルガム-ライコムギ作付体系における液状きゅう肥の土中還元容量

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要約

高収量とされるソルガム-ライコムギ体系において液状きゅう肥を土中施用し,作物への影響並びに環境への影響を調べ、施用基準策定のための基礎資料を得た。液状きゅう肥の土中還元容量は1作当たり窒素として28~38kg/10a(6~8t/10a)の範囲にあると考えられる。

  • 担当:草地試験場・環境部・土壌物質動態研究室
  • 連絡先:0287-37-7558
  • 部会名:生産管理
  • 専門:肥料
  • 対象:牧草類
  • 分類:指導

背景・ねらい

嫌気状態で貯留された液状きゅう肥の散布で問題となる悪臭発生は土中に施用することで抑制できるが、土中施用での施用基準がないため早急な策定が求められている。また、近年開発された飼料作物の高収量作付体系は養分吸収量が多いと考えられ、その養分を液状きゅう肥から供給することでふん尿問題の解消と自給率の向上が図れると期待される。このような観点からソルガム-ライコムギ作付体系を用いて土中施用で液状きゅう肥の連用試験を行い、還元容量について検討した。

成果の内容・特徴

  • ソルガム-ライコムギ体系において液状きゅう肥を毎作16t/10aまで土中施用し、作物並びに環境への影響を調べ、施用基準策定のための基礎資料を得た。
  • 土中に施用された液状きゅう肥中の窒素が放出される過程をガラス繊維ろ紙法で調べた。施用直後1ヶ月以内の急激な放出の後、穏やかな放出が続く。施用直後の放出は主として液状きゅう肥に当初含まれていた全窒素の55%を占めるアンモニア態窒素に由来すると考えられる。その後の窒素放出率は次式で近似した。 Y=100 - 39.4e-0.0185x ( Y:窒素放出率(%),X:月数) ・・・式1これにより、液状きゅう肥からの窒素放出の長期予測が可能となった(図1)。
  • 1年間の乾物収量は最大で3t/10a程度得られた。飼料の品質を硝酸態窒素含量及びK/(Ca+Mg)当量比からみると、施用量6t/10aではほとんど問題がなかった(表1)。
  • 地表からのアンモニア揮散はほとんど認められなかった。地下1mの土壌溶液中の硝酸態窒素濃度は、8t/10aの施用まで概して水道水水質基準の10ppm以下であった(図2)。12t/10a以下の施用量では土壌への過剰な塩基の集積は認められなかった。
  • 液状きゅう肥からの窒素放出過程に式1を適用して窒素収支(窒素供給量-窒素吸収量)を計算したところ、施用量6t/10a及び8t/10aにおいて窒素は年間でそれぞれ12.2kg/10a、21.4kg/10aの供給過剰となった(表2)。施用量8t/10aでは、地下1mにおける土壌溶液中の硝酸態窒素濃度の平均が約10ppmであったことから、降雨の浸透量を750mmと仮定するとおよそ7.5kgN/10aの溶脱があると試算された。
  • 以上のことから、液状きゅう肥の土中還元容量は1作当たり窒素として28~38kg/10a(6~8t/10a)の範囲にあると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 液状きゅう肥の成分濃度は変動が大きいので成分濃度を正確に把握する必要がある。
  • 特に牛の液状きゅう肥ではカリウム濃度が高い場合があり、その場合にはカリウム含量によって還元容量が制限される。
  • 施用基準策定に当たっては、気候条件、土壌条件、作物生育等に留意する必要がある。

具体的データ

図1.ガラス繊維ろ紙法でみた液状きゅう肥からの窒素放出過程表1.連用3年目からの作物の収量と品質

図2.土壌溶液中の硝酸態窒素濃度の推移(1995)

表2.年間の窒素収支の計算

その他

研究課題名:飼料作物の高位生産作付体系下における土壌養分動態に基づく有機物還元容量増強
予算区分  :一般別枠
研究期間  :平成9年度(平成4年~10年)
研究担当者:野中邦彦、渋谷岳、近藤煕、川内郁緒、山本克巳
発表論文等:野中邦彦ら、ソルガム-ライコムギ体系による液状きゅう肥施用量の増強、土肥
学会講要、43、1997
    野中邦彦ら、土中施用における液状きゅう肥成分の動態、日本草地学会誌、43別、 1997