ゼラチン培地を用いたサイレ-ジ添加用乳酸菌のプロトプラスト再生方法
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要約
サイレ-ジ添加用乳酸菌を育種するための、高濃度のゼラチンを主成分とした培地
(ゼラチン培地)を用いたサイレ-ジ添加用乳酸菌のプロトプラスト再生方法である。これにより、サイレ-ジ添加用乳酸菌の主要菌種のプロトプラスト再生が可能であ
る。
- 担当:草地試験場・飼料生産利用部・飼料調製評価研究室
- 連絡先:0287-37-7804
- 部会名:飼料利用
- 専門:バイテク
- 対象:微生物
- 分類:研究
背景・ねらい
乳酸菌の育種による機能向上の方法として、プロトプラスト融合法がよく知られている。しかし、サイレ-ジ添加用乳酸菌として有用な菌種が多く含まれているLactobacillus 属の乳酸菌については、プロトプラストの再生が可能な菌株は限られ、しかもそれらの再生率は多くの場合、10%以下と低い値にとどまっている。それがプロトプラストを利用したサイレ-ジ添加用乳酸菌の育種の上での障害となっていた。 そこで、サイレ-ジから分離した各種のLactobacillus 属等の乳酸菌株を用いて、それらのプロトプラストの再生方法を検討した。
成果の内容・特徴
- 従来、乳酸菌プロトプラストの再生には、培地の浸透圧調節剤である0.3Mのラフィノ-スの他、0.025M程度のMgCl2と2.5%のゼラチンを含有する寒天培地が用いられてきた(表1)。このような組成の培地を用いた場合、L. plantarum 株のプロトプラストは全く再生が認められなかったが、(表2)、本研究で新たに開発したゼラチン培地(表1)を用いて嫌気条件下で培養(23°Cで7~10日間)することにより、90%以上の再生率が得られる(表2)。
- 本ゼラチン培地では、寒天のかわりに高濃度のゼラチンとポリビニルピロリドン(PVP)を主成分として用い(水1L当たりそれぞれ300g及び100g)、MgCl2含量を0.1Mまで増加することにより(表1及び表2)、乳酸菌プロトプラストの再生率が向上する(表2)。
- 本ゼラチン培地を用いることにより、L. plantarum 株及びL. pentosus 株の場合で88~99%、L. rhamnosus 株の場合で30~41%と極めて高いプロトプラスト再生率が得られる(表3)。
成果の活用面・留意点
- 本ゼラチン培地は、サイレ-ジ添加用乳酸菌として主要な菌種であるL. plantarum 、L. pentosus 、及びL. rhamnosus のプロトプラスト再生に有効である。
- 本ゼラチン培地を用いても、L. casei 株のプロトプラスト再生率は5%にとどまり、L. curvatus 株及びPediococcus sp. 株では再生が認められなかった。乳酸菌プロトプラストの再生条件は菌種によってかなり異なると思われる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:サイレ-ジ添加用乳酸菌のプロトプラスト再生法の確立に関する研究
- 予算区分:特別研究(重点基礎)
- 研究期間:平成9年(平成9年)
- 研究担当者:田中 治、小林亮英
- 発表論文等:田中 治・小林亮英・大桃定洋(1998)ゼラチン培地を用いた乳酸菌のプロトプスト再生方法(講要).日農化誌、72巻(印刷中).特許出願手続中