草地利用の変更に伴うススキ型草地の多様度指数の変化

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要約

刈取処理によって維持してきたススキ型草地に放牧を加え、その後の種多様性 の変化をShannonの多様度指数により検討した。放牧(年平均放牧強度207(頭・日/ha /年))を開始してから6年目にシバの積算優占度(SDR2)の値がススキを上回り、その 後の優占草種となる。多様度指数は放牧後徐々に上昇し、優占種がススキからシバ へ交代する時期に最大となり、その後、シバの優占化が進行すると減少する。

  • 担当:草地試験場・生態部・草地生態システム研究室
  • 連絡先:0287-37-7225
  • 部会名:永年草地・放牧
  • 専門:生態
  • 対象:野草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

草地群落における種の多様性は近年高まりつつある種の保全や景観保持の視点から草地群落を評価する上で重要である。そこで、刈取処理によって維持してきたススキ型草地に放牧を加え、人為的攪乱の変更がその後の植生及び種多様性に及ぼす影響を検討した。種の多様性は一般に種数が増えるほど、また、種間の量的な関係が均等になるほど増大する。 S その指標としてShannonの多様度指数 H(S) = -Σ pilog2piを用いた。Sは出現する種数、 i=1 piは種間の量的関係の指標であるがここでは各草種の被度及び草丈から求めた積算優占度(SDR2)の総計に対する、i番目の種のSDR2が占める割合とした。即ち、種数(S)が多いほど、また、各草種のSDR2が拮抗するほどH(S)は高い値をとる。

成果の内容・特徴

草地試内のススキ型草地に刈取区と刈取・放牧区を設け(図1)、各々8ヶ所の定点について毎年9月に行った植生調査から各草種のSDR2及び多様度指数(H(S))を求めた。

  • 刈取区ではススキが優占し、SDR2の値がほぼ100%で推移した。一方、シバのSDR2は約10%で推移する。多様度指数は年次変動があるものの概してみるとゆっくりと減少する傾向が認められる(図2)。
  • 刈取・放牧区では放牧(年平均放牧強度207(頭・日/ha/年))を加えてからシバのSDR2が徐々に高まり、6年目でススキを上回ってその後の優占草種となる。多様度指数は放牧後徐々に上昇し、放牧開始から5~6年目、即ち、優占種がススキからシバへ交代する時期に最大となり、その後、シバの優占化が進行すると減少する(図3)。
  • シバのSDR2がススキを上回るまでに要した累積放牧強度は約1200(頭・日/ha)である。 また、多様度指数が最大となる時期の累積放牧強度の値は1000~1200(頭・日/ha)である(図4)。
  • 出現種数の推移においても多様度指数の推移と同様に刈取区ではゆっくり減少する傾向を示し、刈取・放牧区では優占種の交代する時期に増加する傾向を示す(図5)。

成果の活用面・留意点

  • 半自然草地の植生遷移を種の多様性から評価する際の基礎的知見として活用できる。
  • 種多様性の評価には植物種の組成の変化についても考慮することが必要である。 

具体的データ

図1.供試ススキ型草地の管理の概要

図2.刈取区におけるススキ、シバの積算優占度(SDR2)及び多様度指数(H(S)))の推移

図3.刈取・放牧区におけるススキ、シバの積算優占度(SDR2)及び多様度指数(H(S))の推移

 

図4.図3.刈取・放牧区における累積放牧強度とススキ、シバの積算優占度(SDR2)及び多様度指数(H(S))との関係

図5.刈取区及び刈取・放牧区における出現種数の推移

 

その他

  • 研究課題名:ススキ型草地における植生遷移機構の解明(草地動態)
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:昭和53~平13年度
  • 研究担当者:山本嘉人(現九州農試)・斎藤吉満・北原徳久・高橋 俊・芝山道郎・高橋繁男
  • 発表論文等:山本嘉人・八木隆徳・斎藤吉満・北原徳久・高橋 俊、異なる人為圧にともなうススキ型草地の種多様性の推移、日草誌42(別)、1996