カラマツ林床のリター層撹乱による牧草定着効果

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要約

カラマツ林床へ牧草を導入する際に林床のリター層を撹乱することによって,牧草 の初期定着が向上し,かつ,牧草の速やかな定着・成長は,タラノキ・クマイチゴ等 の灌木類の出現を抑制する。

  • 担当:草地試験場・山地支場・山地草地研究室
  • 連絡先:0267-32-2356
  • 部会名:永年草地・放牧
  • 専門:資源利用
  • 対象:牧草類野草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

カラマツ林床を混牧林として有効利用する際に,林床に厚く堆積しているリター層は,牧草の定着を阻害すると考えられる。そこで,リター層を撹乱することによる牧草の定着および雑灌木・雑草類の出現に与える影響を検討した。

成果の内容・特徴

35年生のカラマツ林を4段階に間伐し,さらに林床のリター層を撹乱処理した撹乱区とそのままにした無撹乱区とに分け,6種類の牧草をそれぞれ単播で導入し,撹乱効果を調べた。造成試験は7月中旬に行った。植生調査は,1区画5mx5mで行い,各4反復行った。またリター層の厚さは8~10cmであった。

  • カラマツ林床のリター層の撹乱は,カラマツの立木密度に関係なく6草種全ての初期定着に対して有効である(表1)。立木密度別に分けずに平均被度を比較すると,撹乱区は,6草種で33-49%無撹乱区より高い。
  • リター層の撹乱は牧草の定着を向上させ,速やかな成長は灌木の発芽成長を抑制する(図1)。出現した雑灌木は,タラノキ・クマイチゴであるが(表2),これらは埋土種子から発芽してきたもので,成長が早く,牛の嗜好性も悪いことから急速に拡大する。従って,初期段階でこれらの雑灌木の発芽・定着を抑制する効果は大きい。
  • しかし,雑草類の侵入に対しては,撹乱区と無撹乱区で差が認められない(図1)。造成時に出現する雑草は,ほとんどが1年生草本で,草地を維持する上では2年目に消滅するのでほとんど影響はない(表2)。ただし,ミゾソバは,撹乱区に多く出現する。

成果の活用面・留意点

  • 他の針葉樹林床に牧草を導入し,草地化する際に参考となる。
  • 撹乱できないと灌木が出現してくるので,むら無く撹乱することが重要になる。 本研究では,バックホ-のバケットの背面で林床のリター層を撹乱したが,他の機械で行う場合,リター層を少量の土壌と攪乱する必要がある。 

具体的データ

表1.放牧の定着に与えるリター層撹乱効果(平均被度%)

図1.雑草と灌木の出現に与えるリター層撹乱効果

表2.造成初期に出現する主要な灌木と雑草の被度(%)とリター層撹乱効果

その他

  • 研究課題名:林畜複合のための林床改良利用法の確立 2)林床の環境条件と導入草種の発芽・定着、生育
  • 予算区分:大型別枠(新需要)
  • 研究期間:平成9年度(平成6年~9年)
  • 研究担当者:下田勝久,河野道治,林治雄,斉藤吉満
  • 発表論文等:カラマツ林床下への牧草導入技術の開発~導入牧草の定着に及ぼす造成条件の影響~,日草誌,41巻別号,1995