自家産の若雄牛を利用したマキ牛交配の交配期間
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要約
自家産の若雄牛(月齢約14か月齢)を利用したマキ牛交配では,分娩牛のうち90%以上が交配開始から42日以内に受胎した。また、交配頭数が若雄牛当たり18頭以内では分娩率(分娩頭数/交配頭数x100)に差がなかった。
- 担当:草地試験場・山地支場・家畜飼養研究室
- 連絡先:0267-32-2356
- 部会名:永年草地・放牧
- 専門:飼育管理
- 対象:肉用牛
- 分類:研究
背景・ねらい
傾斜や複雑地形草地,あるいは遠隔地草地での繁殖作業は極めて多労的である。この対策としてマキ牛交配が取り入れられているが,種雄牛の選抜に取り上げられるような個体は高価で中小規模群では不経済である。そこで,自家生産した若雄(18ケ月齢まで)をマキ牛として用いる場合の,交配期間とマキ牛当たりの交配頭数を検討する。
成果の内容・特徴
草地試験場山地支場におけるマキ牛交配の記録のうち1982年から15か年間の記録を整理した。 繁殖雌牛(黒毛)は浅間山南麓の南斜面(標高約1,200m,傾斜度5~40 ゚)のイネ科主体の傾斜草地に,4ha当たり親子8~12対を4月下旬から11月上旬まで,母牛に対する補助飼料は無給与で昼夜放牧した。交配には前年度産の若雄牛を用い,マキ牛1頭当たり4~25頭の雌牛を交配した。交配期間は15~100日間である。なお,交配対象の雌牛は平均65.8ケ月齢,体重438.5kg,産次が3.5である。
- 若雄牛(マキ牛)の成長 交配開始時におけるマキ牛の平均月齢は14.1,体重324.6kg(日増体量;0.70kg),体高11 9.4cmである(表1)。これらの値は標準的な黒毛和種の雄牛('87飼養標準)と比べて体重は68%,体高は92%および栄養度(体重/体高)は71%である。交配に用いた代表的な若雄牛を 写真1に示す。
- 交配開始から受胎までの日数。 マキ牛の入牧から受胎までの日数("受胎日"("分娩日"-285日)-"マキ牛入牧日",以下受胎までの日数)は,マキ牛の入牧から11日目までに32%,20日までに58%,そして38日目までに88%,42日までに93%が受胎し,平均では18.8±15.1日である(表2)。この平均と標準偏差をもつ正規確率変数を求め,図示したのが図1であるが,マキ牛の入牧から42日までに9 5%以上が受胎したことを示している。
- マキ牛(若雄)の交配期間 若雄牛を用いたマキ牛交配では,雌牛の2性周期にあたる42日間を交配期間にとることで十 分な分娩率が得られる(図1)。
- 分娩率に影響する要因 放牧期間中に成雌牛の放牧頭数が一定していた牧区について,交配開始時におけるマキ牛の月齢と体重について整理した結果,表1に示した月齢と体重の範囲では受胎までの日数や分娩率に有意な差は認められない。また,マキ牛1頭当たり18頭以下の交配では分娩率に影響はない(図2)。
成果の活用面・留意点
- 傾斜・複雑地形草地,あるいは遠隔地草地の比較的小規模な繁殖放牧経営に適応できる。
- 交配に際し,血縁に留意すること。
- 交配日をおさえておくと(ヒ-トディテクタ等をもちいて)分娩前後の管理が容易になる。
具体的データ





その他
- 研究課題名:肉用繁殖雌牛の泌乳量の変動要因
- 予算区分:経 常
- 研究期間:平成5年度(平成4~9年度)
- 研究担当者:寺田隆慶・櫛引史郎(現東北農試)・木戸恭子