梅山豚とゲッチンゲンミニ豚の交雑家系を用いた量的形質関連遺伝子座のマッピング

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要約

梅山豚とゲッチンゲンミニ豚とのF2交雑家系を用いて発育や背脂肪の厚さ,臓器重量などの形質に関与する遺伝子座の位置をインターバルマッピング法によって解析した。その結果,背脂肪の厚さ,乳頭数,生時体重,4-13週のDG,皮膚の厚さ,椎骨数などの形質に関与する遺伝子座のゲノム上の領域を推定することができた。

  • 担当: 畜産試験場 育種部 家畜ゲノム研究チーム
  • 連絡先:0298(38)8627
  • 部会名:畜産
  • 専門:育種
  • 対象:豚
  • 分類:研究

背景・ねらい

豚の育種改良はこれまで表現型にもとづく選抜によって行われてきた。一方,ヒトやマウスにおけるゲノム研究の進展の結果,豚においても発育や肉質,繁殖 性などを左右する遺伝子を探索し,その成果を従来の育種改良システムに取り入れて豚の改良速度を向上できる可能性がでてきた。そこで,DNA育種事業など を遂行するための基礎的な情報を提供するために,豚における経済形質関連遺伝子座の探索のための技術開発を行い,それらの遺伝子座のゲノム上での位置を推 定するために,産子数が多い梅山豚と成熟体重が小さくて繁殖能力に劣るゲッチンゲンミニ豚とのF2交雑家系を用いて,インターバルマッピング法による量的 形質に関与する遺伝子座の探索を実施した。

成果の内容・特徴

  • ゲッチンゲンミニ豚雄1頭,梅山豚雌2頭からF2子豚338頭を生産した。形質としては生時体重,4週齢体重,13週齢屠殺時の乳頭数,椎骨数,背脂肪の厚さ,臓器重量,血液生化学値など57形質を測定した。
  • 生後1週間で採取した耳刻片からDNAを抽出し,全ゲノム領域にわたる318個のDNAマーカ一について親世代,F1世代および215頭のF2世代についてアリルタイピングを行い,全長2961.3cMにわたるDNAマーカーの連鎖地図を作成した
  • これらのデータを用いてHaleyら(1994)によるインターバルマッピング法で季節などの 環境要因を補正して,測定形質に関与する遺伝子座のゲノム上での位置を探索するために各ゲノム位置での尤度比検定統計量を算出し,関連遺伝子座が存在する かどうかの尤度比検定のための有意水準をAnderssonら(1994)のシミュレーション法で計算した。その結果,背脂肪の厚さ,乳頭数,生時体重,4-13週のDG,皮膚の厚さ,椎骨数,心臓重量などの形質で,それらの形質に関与する遺伝子座のゲノム上の領域を推定した(表1,図1)。

成果の活用面・留意点

  • 今回推定することのできた量的形質に関与する遺伝子座のゲノム上の領域についての情報は,DNA育種事業の遂行や豚ゲノム解析を進めるにあたっての基礎的な情報として利用できる。
  • 今後,当該領域内でのマーカー開発を進め,新たな実験家系を作出して解析することによって,当該遺伝子座のより正確なゲノム上での位置が明らかとなり,豚の育種改良の効率化を図ることが可能となる。

具体的データ

表1 22時間選抜区と24時間選抜区の鶏を22時間明暗周期下と24時間明暗周期下で飼育した時の各形質に主効果(系統、光周期)と交互作用の有意性検定

図1 背脂肪厚さ(第7染色体:左)と生時体重(第1染色体:右)の尤度比検定曲線