22時間明暗周期を選抜環境とする鶏の産卵率の改良
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要約
鶏の産卵率の改良のために,22時間明暗周期を設定して選抜を行うことにより,通常の24時間明暗周期下よりも優れた選抜反応が得られた。また,鶏は長期にわたり22時間明暗周期に同調して産卵を続けられることが示された。
- 担当:畜産試験場 育種部 遺伝子制御研究室
- 連絡先:0298(38)8622
- 部会名:畜産
- 専門:育種
- 対象:鶏
- 分類:研究
背景・ねらい
鶏の産卵率の改良は限界に近づいており,さらに改良を進めるためにはより高い産卵率の発現が可能な新しい選抜環境の探索が必要である。そこで,鶏の産卵
率を改良するための選抜環境として22時間明暗周期を設定し,24時間明暗周期下の選抜と比較検討するとともに,各系統間の遺伝的差異を明らかにする。選
抜系統については遺伝資源としての利用性を考える。選抜実験は,22時間選抜区(14L:8D,雌240羽),24時間選抜区(15L:9D,雌240
羽),コントロール区(無選抜区,15L:9D,雌120羽)の3区を設定し,181~300日齢産卵率に基づき異なる光周期下において産卵率を改良する
選抜を行った。
成果の内容・特徴
- 選抜第16世代における181~300日齢産卵率は,22時間選抜区93.9%,24時間選抜区89.5%,コントロール区79.6%であり,22時間選抜区で最も高い産卵率が得られた。
- これまでの選抜結果から,両選抜区とも産卵率は90%前後で推移している(図1)が,コントロール区からの偏差で見ると,明らかな選抜反応が認められている(図2)。
両選抜区を比較すると,22時間選抜区の方が24時間選抜区よりも高い産卵率を示す傾向が認められている。このことは,24時間選抜区では産卵率の能力の
発現(100%が上限)がほぼ限界に達しているのに対して,22時間選抜区では産卵率の上限が,24時間周期に換算して109%となることから,より高い
産卵能力を発現できた結果によるものと考えられる。
- 放卵パターンを見ると,22時間選抜区では22時間明暗周期に同調して長期間産卵する個体が多
く見られ,22時間周期に適応して産卵する集団が構成されてきていると思われる。この適応現象が遺伝的なものかどうかについては明らかではないが,鶏の産
卵能力は24時間に1個が限界ではなく,長期にわたり少なくとも22時間に1個の産卵を続けることは可能であることが示された。
- 22時間選抜区,24時間選抜区の鶏を22時間および24時間明暗周期下に置き産卵能力を調査した結果,産卵率に遺伝と環境の交互作用が検出(P<0.05)された(表1)。このことは,鶏はそれぞれ選抜されてきた環境下で高い産卵能力を発現することを示しているものと考えられる。
成果の活用面・留意点
- ここで選抜,造成された系統は卵用鶏,特に多産系統の遺伝資源,育種素材として利用可能である。ただし,卵形質に関しては選抜の際考慮していないため,特に卵重は小さくなっている。
具体的データ


