日齢の異なる胚の組み合わせによるキメラ豚の作出

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要約

豚において,6~7日齢の胚盤胞から単離した内部細胞塊を,3~5日齢の胚に注入した場合,両者の日齢の差が2日以内であれば,キメラ個体が得られる。

  • 担当:畜産試験場 育種部 育種素材開発研究室
  • 連絡先:0298(38)8624
  • 部会名:畜産
  • 専門:育種・繁殖
  • 対象:豚
  • 分類:研究

背景・ねらい

遺伝子導入により形質転換動物を得る手段の一つに,胚性幹細胞を用いたキメラの作出があげられる。この場合,胚性幹細胞が効率よくキメラとして個体内に 組み込まれる必要がある。マウスでは,日齢の異なる胚を組み合わせた場合,日齢の進んだ胚が有為に組み込まれることが報告されて いる。豚においては,同じ日齢の胚を組み合わせたキメラの作出例はあるが,異なる日齢の胚を組み合わせた場合の報告はない。そこで,マウスでの結果を豚で検証し,効率的なキメラの作出方法の確立に資することとした。

成果の内容・特徴

  • 6日齢の胚盤胞から単離した内部細胞塊を,4日齢および5日齢の胚に注入した場合,キメラが得られた(図1)。 キメラの判定は,毛色およびPCR-SSCP法による血液中のミトコンドリアDNA多型の検出により行った。細胞を注入しない3日齢の胚の移植による産子 はこれまで当研究室で得られている。しかし,細胞を注入した3日齢の胚の移植による産子は,本研究所では得られなかった(表1)。
  • 7日齢の脱出胚盤胞から単離した内部細胞塊を,5日齢の胚に注入した場 合,キメラが得られた。しかも,産子の中には,注入側の細胞由来の外見を示す個体が含まれていた。4日齢の8~16細胞期の胚に注入した場合,低率ながら 産子が得られたが,キメラではなかった。3日齢の胚に注入した場合,産子は得られなかった(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 7日齢の細胞を,5日齢の胚に注入した場合,注入した細胞由来の外見を示す個体がキメラと共に得られた。豚においては体細胞クローンの技術が未だに確立していないことから,細胞から効率的に個体を再生させる手段に本法が利用できる。

具体的データ

図1 妊娠6日齢の胚盤胞から単離した内部細胞塊を妊娠4日齢の胚に注入して得られたキメラ

表1 受け入れ側の胚の発生時期がキメラ形成能に及ぼす影響