牛体細胞核移植によるクローン個体の作出
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要約
牛胎子由来および成牛由来体細胞を除核卵子に核移植し再構築胚を作出した。体細胞核移植胚を受胚牛に胚移植した結果,受胎が認められ,産子が得られた。得られた産子のD N Aマーカーは供核細胞と一致し,クローン個体であることが証明された。
- 担当:畜産試験場 繁殖部 生殖工学研究室
- 連絡先:0298(38)8627
- 部会名:畜産
- 専門:繁殖
- 対象:肉用牛・乳牛
- 分類:研究
背景・ねらい
体細胞クローン羊ドリーの作出によって,成熟した雌羊の体細胞を体外で培養後,未受精卵子に核移植することによって新たな個体を生み出すことが可能であ
ることが明らかとなっている。この技術を牛に応用し,同一の遺伝形質を有する個体を大量に作出し,あるいは,すでに能力の明らかな個体の複製を多数作出す
ることによって,家畜の改良・増殖の効率化を図ることが可能となると期待されている。
成果の内容・特徴
- 牛胎子および成牛皮膚より細胞を採取し,体外培養により増殖させた。こ
れらの細胞を0.5%牛胎子血清加MEM培地(グルタミン欠)で5日間血清飢餓状態で培養し,供核細胞とした。核を除去した牛体外成熟卵子(レシピエント
卵)に電気パルス(25V,10μ秒)で供給細胞を融合させた後,サイトカラシンD(2.5μg/ml)とシクロヘキシミド(10μg/ml)で1時間,
さらにシクロヘキシミドで4時間処理した(図1)。作出した核移植胚を7日間体外で培養したところ,胎子細胞で23.8%,成牛細胞で34.7%が桑実胚・胚盤胞に発育した(表1)。
- 発育した桑実胚・胚盤胞を受胚牛に移植したところ,胎子細胞由来で13
頭中2頭,成牛細胞由来で29頭中10頭が妊娠した。その後の妊娠経過を観察した結果,胎子細胞由来で1頭,成牛細胞由来で7頭に胚死滅または流産(1頭
は妊娠牛の事故により廃用)が発生したが,胎子細胞由来核移植産子が1頭,成牛細胞由来核移植産子2頭が得られた(表2)。
- 得られた核移植産子についてマイクロサテライトをマーカー(23種)としたDNA解析を行った結果,いずれの個体についても用いた供核細胞ならびに同一個体由来の他の組織とすべてのマーカーが一致し,産子がクローン個体であることが証明された。
成果の活用面・留意点
- 本技術によって体細胞由来クローン牛を作出することができる。
- 妊娠期間中の胚死滅・流産の発生が多いことがあるので注意を要する。
- 過大産子,虚弱産子の発生を考慮し,周産期管理を適切に行うことが重要である。
- 家畜を対象とした核移植については,適切な情報公開を行うこととなっている。
具体的データ


