即発ガンマ線分析による畜産関連試料中のホウ素の定量
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要約
原子炉利用の最新技術である即発ガンマ線分析法により畜産関連試料中のホウ素を簡便に0.1μgのレベルで定量可能なことを確認した。この方法を適用して羊のホウ素代謝を調べた結果,ホウ素は速やかに吸収され,体内に蓄積されることが分かった。
- 担当:畜産試験場 生理部 生体機構研究室
- 連絡先:0298(38)8627
- 部会名:畜産
- 専門:生理
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
微量元素の要求量の解明と,それに基づいた適切な飼料給与を行うためには,家畜の微量元素の代謝動態を事前に把握する必要がある。即発ガンマ線分析
(PGA)は,元素分析法の一種で,原子炉等から発生する中性子と試料中の元素との核反応の際,10-14秒という短時間に放出される即発ガンマ線を利用
する方法である。PGAの利用には,従来法にない非破壊,同時多元素定量法等ができる利点がある。そこで,新しくPGAを利用した生体成分分析法を開発
し,家畜体内における微量元素の動態を解明し,この方法の有効性を確認する。
成果の内容・特徴
- カルシウムおよびリン代謝と関連が深いホウ素を対象元素として,原研3号炉改造炉(JRR-3M)(茨城県東海村)の熱または冷中性子ガイドビームに設置された即発ガンマ線分析装置(図1)を利用し,国際標準試料(植物,動物)を用い,PGAによる測定法(試料形状,試料量,測定時間等)について検討すると共に,各種畜産関連試料(飼料,臓器等)中のホウ素の定量,さらに,羊におけるホウ素の移行・排泄・蓄積について検討した。
- 飼料・糞等は乾燥後,臓器は凍結乾燥後,粉末として錠剤整形器によりペ
レット状(直径13mm,重量0.3g前後)とし,血液・尿はlmlをテフロン製容器に入れ,即発ガンマ線分析装置を用い測定時間17~300分/試料
(試料中のホウ素含量の多少による)でホウ素の測定が可能である。
- 乾草のホウ素含量は7.5ppm,配合飼料では48.5ppmで,牛糞のレベルは乾草のそれの約3倍であった。
- ホウ素を添加した飲水(ホウ素として100ppm)を給与した羊では,血漿中のホウ素濃度は約6~8ppmとなり(図2),臓器中のホウ素濃度は,対照区のそれの約10倍であった(表2)。
成果の活用面・留意点
- 原子炉を用いる即発ガンマ線分析は,実験時はラジオアイソトープ等を用いない状態で実施でき,得られた試料をそのままで,あるいは粉末にした状態で測定が可能であり,ホウ素以外にも試料中の元素レベルがppb~ppm(10-9~10-3g/g)程度のH,N,C,S,P,Hg,Cd,Mn,Cu等の元素分析ができる。
- 日本原子力研究所の即発ガンマ線分析装置については,平成11年度より,共同利用方式による利用が可能である
具体的データ


