高周波プラズマ質量分析による畜産関連試料中の微量元素の測定

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要約

高周波プラズマ質量分析法は,乾草,糞,飲水等に含まれるモリブデン,セレン等の量元素を同時に,ppt(10-llg/g)の極微量まで測定ができる。このため,本法の利用で家畜生態系を循環する微量元素の動態が調査可能となる。

  • 担当:畜産試験場 生理部 生体機構研究室
  • 連絡先:0298(38)8646
  • 部会名:畜産
  • 専門:生理
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

高周波プラズマ質量分析(ICP-MS,図1)では,高周波誘導結合プラズマ中に導入された試料中の各元素は,その大部分がイオン化された後,インター フェース部を経て質量分析計部に導入され元素の定性・定量測定が行われる。この為,従来の高周波プラズマ発光分析法に比較し,検出感度が10~100倍高 く,対象元素の範囲も広まる。この方法の適用により家畜の飲水,飼料,臓器,排泄物に含まれるMn,Co,Se,Cu,Fe等をppm~ppt(10-6~10-11g/g)のレベルで分析可能となることが期待され,その最適測定条件を検討する。

成果の内容・特徴

  • 家畜飲料水はそのまま,飼料や糞等は試料約0.5~1.Ogに硝酸を基本とし,必要に応じ過塩素酸等を添加し,約200°Cで有機物を酸分解する。
  • モリブデンやアンチモン等16種類の元素ではppmからppb以下の範囲で高い直線性のある検量線が得られる(図2)。
  • 家畜飲料水(採取地点2ヶ所12)では,クロムやセレン等16元素で10ppt~10ppbの極微量の測定が可能である(表1)。
  • 飼料,糞,臓器(肝臓)では,ppbから%の幅広い濃度で各種元素が存在する(表1)。

成果の活用面・留意点

  • ICP-MS法は,元素の含有量が全体に少ない家畜飲料水中の元素分析法として最適である。また,高周波プラズマ発光分析(10-5~10-9g/g),原子吸光法(10-5~10-7g/g)との併用により,各種試料中の元素を広範囲に測定できる。
  • 精度向上の方法として,内部標準 (Sc,Y,Ce,Ti,In等)を添加する方法の他,飼料,排泄物等についてはマイクロウェーブ分解装置の使用等による測定時に妨害の原因となりやすい 過塩素酸を用いない硝酸主体による分解法の採用,機器の試料導入部のクリーニング,質量分析部の設定条件等の最適化の措置により,かなりの改善が期待でき る。

具体的データ

図2 検量線(Mo)

表1 高周波プラズマ質量分析による畜産関連試料の測定