ヤギの摂食行動等に対する視床下部腹内核の一酸化窒素の役割
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要約
ヤギの発情期における摂食行動の低下は,主としてエストロジェンによってもたらされ,その作用を仲介する中枢神経機構として視床下部腹内側核の一酸化窒素が関与していることが示された。
- 担当:畜産試験場 生理部 適応生理研究室
- 0298(38)8649
- 部会名:畜産
- 専門:生理
- 対象:山羊
- 分類:研究
背景・ねらい
視床下部腹内側核は摂食行動,繁殖行動,代謝機能などの調節に深く関連する中枢であると考えられているが,反芻動物の腹内側核の役割についてはほとんど
知られていない。そこで本研究ではシバヤギを実験動物として用い,腹内側核の摂食及び繁殖に対する機能を形態学的および生理学的に明らかにしていくことを
目的とした。
成果の内容・特徴
- ヤギでは,発情行動の誘起,および発情期中に見られる摂食行動の低下には,卵巣ホルモンのうちエストロジェンが重要な役割を担っていることが示された(参考文献,1,2,4)。
- 腹内側核には一酸化窒素合成酵素(NOS)(図1)
およびエストロジェン受容体を含む神経細胞が多数存在し,両者の分布はかなり一致していた。従って,中枢神経系におけるエストロジェンの作用部位の一つは
腹内側核であり,そこではエストロジェンの作用が一酸化窒素(NO)によって仲介されている可能性が考えられた(参考文献,1,3,5)。
- 腹内側核のNOSを薬理学的に刺激すると,細胞外液中のcGMP濃度が上昇することから,ヤギの腹内側核には,NO-cGMP系が存在することが示された。
- 腹内側核にNOS阻害剤を投与しNOの放出を抑制すると,エストロジェンによる摂食量の低下は完全に消失し(図2),エストロジェンの摂食行動に対する作用は腹内側核のNOによって仲介されていると考えられた(参考文献,3)。
- 以上の実験結果を総合すると,腹内側核には
図3
に示す機構が存在するものと考察された。
成果の活用面・留意点
- 新奇な神経伝達物質として着目されているNOの生理的機能の一つが明らかとなった。しかし,発情行動に対する関与は今回の実験では確認することができなかった。
具体的データ


