乳牛の泌乳初期における混合飼料(TMR)の採食量と反留胃内通過速度

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要約

泌乳初期の乳牛の混合飼料(TMR)の採食量は,分娩後週数の経過にともなって増加するが,飼料が反鶉胃内を通過可能となるまでの微細化速度および通過速度は速まらない。

  • 担当:畜産試験場 栄養部 反すう家畜代謝研究室
  • 連絡先:0298(38)8655
  • 部会名:畜産
  • 専門:動物栄養
  • 対象:乳用牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

泌乳初期の乳牛の飼料採食量は,分娩後日数の経過にともない増加する。しかし,その程度は乳生産量の増加よりも小さいことが多く,体からエネルギーの持 ち出しを強いることになる。採食量を規制する要因として,化学的あるいは物理的要因があるが,養分要求量の多い泌乳初期は,飼料の通過速度等の物理的要因 が大きく関わっていることが考えられる。そこで,混合飼料(TMR)を自由採食させた泌乳初期乳牛において,反芻胃内の飼料の通過速度と飼料採食量との関 連を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 泌乳牛(n=7,分娩時体重:592±64kg,産 次:3.1±1.8)による,コーンサイレージおよびイタリアンライグラス成形乾草を粗飼料源(乾物あたり42%)とするTMRの自由採食量は,分娩後週 数の経過にともない増加するが,その増加率(56%)は,乳量の増加率(79%)に比べて小さい(表1)。
  • Ybで標識した成形乾草およびLaで標識した粉砕乾草(2mm以下)を,飼料と同時に摂取させ,その後の糞中の各元素の濃度曲線をEllisらが開発したG2G1モデル(図1) により解析することで,反芻胃内の飼料の微細化や比重の増加によって通過可能となるまでの速度(K1)および通過速度(k2)が得られる。k1は成形乾草 では粉砕乾草より遅いが,k2は両乾草間で差がない。両乾草のk1およびk2は,分娩後2週目と4週目との間に差がない。(表2)
  • 反芻胃内の滞留時間(1/k1十1/k2)は,粉砕乾草では2週目と4週目で差がないが,成形 乾草では2週目で長い傾向にある。成形乾草は粉砕乾草より反芻胃内滞留時間が長い。Co-EDTAを摂取させ,その後の糞中のCo濃度の指数関数的減少の 傾きを求め,反鶉胃内液体の滞留時間が得られる。反芻胃内液体の滞留時間は,4週目より2週目の方が長い。(表3) 以上から,分娩後週数の経過にともなう反芻胃内飼料の通過速度の増加は採食量の増加に比べて小さいことから,泌乳初期における乳牛の採食量の増加は,反芻 胃容積の拡大に依存している可能性が考えられる。分娩後の反芻胃容積の拡大の速度が,TMRの採食量増加の停滞に関わっている可能性が示唆される。

成果の活用面・留意点

  • 泌乳初期の乳牛の飼料採食量予測式を作成する上での参考となる。
  • 飼料採食量の泌乳初期における増加停滞メカニズムを,反芻胃容積および反芻胃内飼料動態の面から,さらに詳細に明らかにする必要がある。

具体的データ

表1 飼料採食量および乳量

図1 モデルの概念図

表2 反芻胃から通過可能となるまでの速度(k1)および通過速度(k2)

表3 成形、粉砕乾草および液体の反芻胃内の滞留時間