ブタ骨格筋における,ミオシン重鎖アイソフォーム発現様式解析法

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要約

ブタ骨格筋には4種類のミオシン重鎖(MyHC)アイソフォームが存在する。ブタMyHC-2xの部分cDNA配列を新たに決定した。決定した配列を基に,RT-PCR法を用いて,4種類のMyHCアイソフォームの量比を分析する方法を開発した。開発した方法で,ブタの筋肉によるMyHCアイソフォーム発現様式の違いを明らかにできた。

  • 担当:畜産試験場 加工部 食肉特性研究室
  • 連絡先:0298(38)8686
  • 部会名:畜産・食品
  • 専門:加工利用
  • 対象:豚
  • 分類:研究

背景・ねらい

ミオシンは,骨格筋の筋原線維タンパク質重量の約43%を占める,筋肉内の主要タンパク質である。成熟した家畜の骨格筋には,分子構造が少しずつ異なる 4種類のミオシン重鎖(MyHC)アイソフォームが存在する(MyHC-2a,一2b,一2x,一slow)。この各アイソフォームがど様な割合で存在し ているかという,MyHCアイソフォームの発現様式は,食肉の品質,特に食感(テクスチャー)に影響を及ぼすのではないかと考えられている。しか し,MyHCアイソフォームの発現様式の分析法が無いことが研究上のネックになっていた。 そこで,RT-PCR法によって,豚のMyHCアイソフォーム発現様式を解析する方法を開発することを目的に研究を行った。さらに,開発した手法を用いて,ブタの筋肉によるMyHCアイソフォーム発現様式の違いを検出した。

成果の内容・特徴

  • ブタMyHC-2xアイソフォームcDNAのN末端部分配列(399bp)を新たに決定した。決定した配列を基に各アイソフォームに特異的なPCRプライマーを合成した( 図1 )。 これらのプライマーを用いて,テンプレートに含まれる各MyHCアイソフォームDNAの量比に対応したPCR産物が得られるようなマルチプレックスPCR 法を開発した。筋肉中のRNAから合成したcDNAをテンプレートとして上記のPCR法を行うことによって(RT-PCR),筋肉中の各MyHCアイソ フォームの量比を推定することが可能となった。
  • ブタのMyHCアイソフォーム発現割合は筋肉によって大きく異なってい た。すなわち,胸最長筋はMyHC-2xが60%,MyHC-2bが30%,MyHC-2aが5%,MyHC-slowが5%であった。半辣筋において は,同,40,0,25,35%であった。半腱様筋においては,同,30,60,5,5%であった。舌筋では,MyHC-2aが50%であった。一方,横 隔膜では,MyHC-slowが50%であった。半辣筋,舌筋,横隔膜にはMyHC-2bの発現がみられなかった( 図2 )。

成果の活用面・留意点

  • 本研究により初めて,4種類すべてのMyHCアイソフォームの量比を分析できるようになった。この手法はMyHCアイソフォームと食肉の品質の関連を明らかにする研究だけでなく,家畜組織学,家畜生理学の分野にも有効な手段となると思われる。

具体的データ

図1 各MyHcアイソフォームcDNAを増幅するためにPCRプライマーの配列

図2 ブタの筋肉によるMyHcアイソフォーム発現割合の違い