γ一アミノ酪酸生成能の違いによるチーズスターター菌の亜種判別法
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要約
チーズスターター用乳酸菌Lactococcus lactisには,subsp.lactisおよびsubsp.cremorisの2亜種が存在する。今回,両亜種間でグルタミン酸脱炭酸酵素活性が異なることを明らかにし,活性測定に基づいた両亜種の簡便な判別法を開発した。
- 担当:畜産試験場加工部品質評価研究室・微生物利用研究室・上席研究官
- 連絡先:0298(38)8688
- 部会名:畜産・食品
- 専門:加工利用
- 対象:細菌
- 分類:研究
背景・ねらい
チーズスターター用乳酸菌Lactococcus
lactisは,菌学的性質の違いによりL.lactis ssp. lactis(lactis)およびL.lactis
ssp.cremoris(cremoris)の2亜種に分類されている。cremorisは,4%NaCl存在下や,pH9.2の培地,また40°Cでは
生育できないという性質のほか,アルギニンデイミナーゼ(ADI)活性を示さないことが特徴である。本研究では,L.lactisにおけるグルタミン酸脱
炭素酵素(GAD)活性の有無がADI活性と一致することを明らかにし,GAD活性あるいはGADの反応生成物であるγ一アミノ酪酸(GABA)を定量す
ることによるL.lactisの簡便な亜種判別法を開発した。(図1)
成果の内容・特徴
- 標準株を含むL.lactis16株(lactis10株,およびcrmoris6株)をスキムミルク培養し,GABA生成能を検討した(表1)。lactisではすべての株でGABAを生成したが,cremorisでは1株も生成は認められなかった。
- 適当な液体培地(M17,TYG等)で調製した菌体のGAD活性を測定したところ,cremoris株ではまったく認められなかった(表1)。GABA生成とGAD活性の有無は,ADI活性の有無と完全に一致していた。
- チーズスターターから分離した乳酸菌37株についてGABA生成能を調べ,従来法による亜種判定結果と比較した(表2)。GABA生成の有無による亜種判別結果は従来の判別法の結果と完全に一致した。
- 以上の結果から,GABA生成能あるいはGAD活性を定性することにより,L.lactisの亜種を簡便に判別することが可能であると結論した。
成果の活用面・留意点
- ADI活性測定は,1集菌に適しかつ生育の良
い培地の検索,2菌体混濁液の濃度調整,3酵素活性測定試薬の調製が必要であるが,GABA生成能はスキムミルク培養の上清を試料にして検査できる。ほと
んどのL.lactisはスキムミルク培地でよく生育するので,適当な培地を検索する必要がない。
- 本法は亜種判別の第1段階として非常に有用である。しかし,突然変異によりGADタンパクが不活性となることも考えられるので,正確な判断のためにはGABA生成のみではなく他の数項目についても検査することが望ましい。
具体的データ


