とうもろこし花粉の超低温保存に及ぼす乾燥・再吸湿処理の効果

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要約

とうもろこしの花粉の液体窒素による超低温保存の場合、花粉の含水率を12%前後まで乾燥させ、保存花粉の解凍後、緩やかな再吸湿処理を行うことにより、保存花粉の交配による雑種種子が得られる。

  • 担当:草地試験場・育種部・育種資源研究室
  • 連絡先:0287-37-7552
  • 部会名:育 種
  • 専門:育 種
  • 対象:飼料作物類
  • 分類:研究

背景・ねらい

とうもろこしの花粉の寿命は短く、保存が困難である。超低温保存法が確立されれば、組合せ能力検定の交配作業が効率化されるほか、花粉バンクとして遺伝資源の保存にも利用できる。しかし、とうもろこしの花粉の凍結保存についての報告は極めて少ない。超低温による花粉の長期保存の確立のため、乾燥耐性が弱い とうもろこし花粉の凍結前処理としての乾燥法、凍結保存後の再吸湿処理の効果について検討した。

成果の内容・特徴

  • 花粉の凍結前の乾燥処理(25°C-相対湿度50%)で、含水率が30%程度までは人工培地での発芽率の低下は みられないが、20%程度になると急速に低下し、11%の発芽率は0%となった。 しかし、乾燥処理後の緩やかな再吸湿処理(25°C-相対湿度94%での90分間処理)により、含水率が40%程度 となり、人工培地での破裂花粉率が低下し、発芽率が回復する (表1) 。
  • 液体窒素による保存花粉の再吸湿処理後の発芽率は、凍結前の含水率が低くなるに従って高くなり、 凍結処理前の含水率11%の花粉で良好な発芽率(66%)が得られる (表1) 。
  • 圃場条件下で、凍結保存花粉を用いて交配した結果、含水率11~14%で数粒の種子が得られた。また 、保存花粉により温室栽培の雌穂に交配した結果、含水率12%の花粉で、新鮮花粉の交配と同様な1穂当たり の交配子実数が得られる (表2) 。
  • とうもろこしの花粉の液体窒素による超低温保存では、前処理として花粉の含水率を12%前後まで乾 燥させ、保存花粉の解凍後には、緩やかな再吸湿処理を行うことにより、保存花粉の交配による雑種種子が得 られる。
  • とうもろこし花粉の液体窒素による超低温保存法の手順は 図1 の通りである。

成果の活用面・留意点

  • とうもろこし花粉の超低温保存法の基礎資料として利用できる。
  • 実用化には、さらに乾燥方法等各手順の最適条件、輸送方法等の検討が必要である。

具体的データ

表1 とうもろこし花粉の乾燥処理と凍結・再吸湿処理が人工培地発芽率に及ぼす影響

表2 とうもろこしの凍結処理保存花粉による1穂あたりの着粒数

図1 トウモロコシ花粉の超低温保存の手順の概略

その他

  • 研究課題名:とうもろこしの花粉の凍結保存法に関する基礎研究
  • 予算区分 :場プロ
  • 研究期間 :平成8年~9年度
  • 研究担当者:M. Y. Vadim(STA)、奥村健治、鶴見義朗、村木正則、蝦名真澄
  • 発表論文等:乾燥処理、再吸湿処理がトウモロコシの超低温保存花粉に及ぼす影響、日草誌
    45(別)(平成11年度草地学会大会発表予定)