ケンタッキーブルーグラスにおける効率的なエンブリオジェニックカルス作成法

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要約

ケンタッキーブルーグラスにおける高い再分化率をもつ効率的なエンブリオジェニックカルス作成には,修正MS培地に2mg/Lの2,4-Dと0.5mg/Lの6BAを加え,20°C暗条件でカルスを誘導し,遅くとも1ヶ月以内に継代する。品種Merionでは約40%の再分化率が得られる。

  • 担当:草地試験場 育種部牧草育種研究室・育種資源研究室
  • 担当:・育種工学研究室
  • 連絡先:0287-37-7550
  • 部会名:草地・育種
  • 専門:育種・バイテク
  • 対象:牧草類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ケンタッキーブルーグラスは牧草・芝草として最も重要な寒地型イネ科草種のひとつである。しかしながら, 最も組織培養が難しい草種のひとつであるため,遺伝子の直接導入のためには効率的な組織培養系の確立が必要である。

成果の内容・特徴

  • 最適のカルス誘導培地は修正MS培地(塩酸チアミン0.5mg/L)に2mg/Lの2,4-D,0.5mg/Lの6BA,ショ糖 30g/L,ゲルライト3g/Lを加えpH5.8にしたものである (図1,2) 。
  • オーキシンの種類は2,4-Dが最適であり,既存の研究で使用例のあるDicambaやPicloramでは再分化率 が劣る。
  • 完熟種子からカルスの誘導までには約2ヶ月かかる。途中、1カ月目に一度新しい培地に継代するこ とによりエンブリオジェニックカルスの形成が促進される。
  • カルス形成を25°Cで行うと生長は早いが褐変しやすい。エンブリオジェニックカルスの形成には20°C がよい (表1) 。
  • 遅くとも1ヶ月以内にカルスを継代しないと,エンブリオジェニックな部分の割合が急速に減少する 。2週間おきに継代した培養系は,15か月後の現在でも高い再分化率を維持している。
  • 既存の報告の培養条件では,再分化能が高いとされる品種Geronimoを用いてもエンブリオジェニック カルス形成率は10%未満で あった。本法での再分化率は,Merionが最も高く約40%,BaronとGeronimoで約30%,その他にもCanon等が10%以 上と非常に高 率である (表1 , 図3)。
  • 不定胚誘導は,カルス誘導培地の2,4-Dを0.2mg/Lにした培地にカルスを移し,25°C明条件で約1ヶ月 間培養する。誘導された不定胚からシュートが形成されたのち、1/2濃度のMS培地(ホルモンフリー)に移し、 発根させる。約1ヶ月後に培養土に順化する。

成果の活用面・留意点

  • 得られた変異体が培養変異か、あるいはごく低頻度の有性生殖個体によるものかは別途 検討が必要である 。

具体的データ

図1 塩酸チアミン濃度と再分化率との関係 図2 6BA濃度と再分化率との関係

表1 ケンタッキーブルーグラスの再分化に及ぼす培養温度の影響と品種間差異

図3 ケンタッキーブルーグラスの不定胚形成と植物体再生

その他

  • 研究課題名:遺伝子組換えによる各種除草剤耐性芝草類の作出技術の開発
  • 予算区分 :連携開発研究・新雑草防除
  • 研究期間 :平成10年度(平成9年~11年)
  • 研究担当者:廣井清貞 蝦名真澄 高溝正 小松敏憲 矢萩久嗣 杉田紳一
  • 発表論文等:平成11年度草地学会にて発表予定