肥効調節型窒素肥料の利用による採草地からの亜酸化窒素放出の低減
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要約
採草地からの亜酸化窒素(N2O)放出は、肥効調節型窒素肥料の利用で低減できる。硝化抑制剤入り
化成肥料の利用、または早春施肥に化成肥料、刈取後施肥に緩効性窒素肥料の利用により、慣行施肥収量を確
保しながらN2O放出を半減できる。
- 担当:草地試験場 環境部 土壌物質動態研究室
- 連絡先:0287ー37ー7558
- 部会名:草地・生産管理
- 専門:土壌;肥料
- 対象:
- 分類:研究
背景・ねらい
亜酸化窒素(N2O)は、施肥窒素が硝化作用を受ける過程でかなり生成されると考えられている。そこで、肥効
調節型窒素肥料を利用することにより、採草地での施肥窒素の硝化を抑制して、N2O放出量を低減させるとと
もに、慣行施肥並の牧草収量の確保を図る。
成果の内容・特徴
採草地に年4回の追肥を行い、施用後の草地表面からのN2O放出量及び牧草収量等を測定した。
- 採草地からのN2Oの放出(N2O-N放出量/施肥N量)は、早春施肥では肥料の種類が異なっても差はないが、
それ以外の時期の施肥では大きく異なった(
表1
、
表2)。硝酸カルシウムや肥効調節型窒素肥料を用いると、年間N2O放出は、慣行の化成肥料の約50%以下に低
下する。
- 1番草の収量は、硝化抑制剤入り肥料を除いた肥効調節型窒素肥料の利用により、慣行の化成肥料に
比べて低下するが、2,3,4番草収量では、慣行施肥との間に大差は見られなかった
(表3)
。
- 肥効調節型窒素肥料の利用による
N2O放出の低減効果、1番草及び年間の牧草収量、肥料の取扱いの難易等を考慮に加えて、N2O放出量の低減
に有効なCDU窒素、硝化抑制剤入り化成肥料
を用いた施肥計画を示した。その場合、牧草栽培期間中N2O放出量は、慣行施肥の約50%程度に低減すると試
算された
(表4)
。
成果の活用面・留意点
- 窒素施肥に伴う亜酸化窒素発生量の削減に寄与する。
- 地温や降水量の著しく異なる地域での適用については、別途検討が必要である。
- この場合の肥効調節型窒素肥料の利用により、肥料代(平成10年12月現在)は約17~57%増となるもの
と試算される。
具体的データ




その他
- 研究課題名:草地における温室効果微量ガスの動態と制御技術
- 予算区分 :環境庁(地球環境)
- 研究期間 :平成7~9年
- 研究担当者:渋谷 岳、川内郁緒、野中邦彦、山本克巳(現 九州農試)
- 研究課題名:草地からのCH4,N2O発生と家畜ふん尿管理
- 予算区分 :環境庁(地球環境)
- 研究期間 :平成10年
- 研究担当者:渋谷 岳、川内郁緒、野中邦彦