牛の月齢とル-メン内嫌気性真菌によるセルロ-スの分解性の変化
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要約
ル-メン内に棲息する嫌気性真菌の数は牛の成長に伴い増加し、いずれの月齢でもNeocalimastix属が優勢である。セルロ-スの分解率は総菌数の増加とともに高まる。
- 担当:草地試験場・飼料生産利用部・乳牛飼養研究室
- 連絡先:0287-37-7806
- 部会名:草地・飼料利用、畜産
- 専門:動物栄養
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
ル-メン内の嫌気性真菌は繊維成分の分解等に重要な役割を果たしている。牛の成長に伴う繊維分解能等のル
-メンの機能発達と真菌の菌数、種類との関係を解
明することはル-メン発酵改善を目的とした真菌接種技術の開発に有用である。本研究では、牛の成長に伴う
繊維分解能を指標とするル-メンの機能発達と真菌
の菌数、種類との関係について検討を加える。
成果の内容・特徴
- 6ヶ月齢、9ヶ月齢、12ヶ月齢のホルスタイン種育成牛(雌)それぞれ2頭にチモシ-乾草と乳牛用配合飼料を
60:40の比率で18日間給与した後、経口
カテ-テルを用いて第一胃液を採取した。採取後、Joblineの培地を用いたロ-ルチュ-ブ法で72時間培養した
。培養終了後、コロニ-の計測及び菌
糸、遊走子嚢の形態による真菌の分類を行った。同時に、ろ紙を入れたJoblineの培地にル-メン液0.2cc及び
抗生物質0.3ccを入れ、72時間培養した後、培養前後のろ紙の重量差から、セルロ-スの分解率を算出した。
- 6ヶ月齢、9ヶ月齢、12ヶ月齢の総菌数はそれぞれ、6.34×102個、26.75×102個、162.38×102個であり、成長に伴い菌数の増加がみられた。真菌はNeocalimastix属とOrpinomyces属が認められ、両者の比率はいずれの月齢でもNeocalimastix
属の比率が高い。(図1
、
2)。
- セルロ-スの分解率は6ヶ月齢、9ヶ月齢、12ヶ月齢で8.8%、11.5%、48.3%であり、成長に伴う向上がみられ、特に12ヶ月目では顕著に高い値を示す
(図3)
。
- 以上のことから、真菌相は牛の成長とともに変化し、それが繊維分解に影響を及ぼしていることがわかる。
成果の活用面・留意点
- 真菌が第一胃に定着する過程を解明するために必要な基礎的知見である。
- 菌種をより正確に同定するには遺伝子レベルでの検討が必要である
具体的データ



その他
- 研究課題名:ルーメン真菌の繊維消化能とその活用技術
- 予算区分 :大型別枠 生態秩序
- 研究期間 :平成10年度(平成6-10年)
- 研究担当者:安藤 貞、西田武弘、石田元彦、M.R.イスラム、押尾秀一