交雑種去勢牛の3か月齢からの放牧育成と産肉性

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要約

人工哺育の終了する3か月齢から兼用草地で補助飼料を給与しながら放牧育成しても,交雑種去勢牛の発育や終牧後の肥育成績は,舎飼粗飼料多給育成牛と差がなく,出荷適期は25~28か月齢と大きな遅延はない。

  • 担当:草地試験場・放牧利用部・産肉技術研
  • 連絡先:0287-37-7811
  • 部会名:永年草地・放牧
  • 専門:飼育管理
  • 対象:家畜類
  • 分類:指 導

背景・ねらい

交雑種(黒毛和種雄×ホルスタイン種雌)牛は,粗飼料の利用性がよいといわれており,比較的早い月齢からの放牧育成に適する可能性がある。そこで,交雑種牛の肥育体系に,人工哺育の終了する3か月齢から10か月齢までという早齢期の放牧育成を組み込むことが,交雑種去勢牛の発育と終牧後の肥育成績に及ぼす影響を検討した。

成果の内容・特徴

  • 交雑種去勢牛を3から10か月齢まで,放牧採草兼用草地においておおむね2日滞牧の輪換放牧(輪換区),およびそれと同じ面積での連続放牧(連続区)によって,いずれもDG0.8kgを目安に放牧草のみでは不足する時期に補助飼料を給与(入牧直後に配合飼料を1頭1日当たり最大1.5kg,終牧前に乾草と圧扁トウモロコシを それぞれ最大2.0,1.5kg)して育成することで,育成期通算DGは,異常気象とみなされた年を除き0.7~0.8kg程度と,舎飼で乾草を不断給与,配合飼料を体重比1.0%を上限に給与する舎飼・粗飼料多給育成(舎飼)区と大きな差はない(表1)。
  • 終牧後の肥育期における体重,枝肉重量,枝肉歩留(図),格付等級(表2),主要筋肉の理化学的性状などの変化の様相に,育成方式による差はない。またいずれの区においても,肉量や飼料効率は肥育15か月(25か月齢)までに,肉質は18か月(28か月齢)までにほぼ一定の水準に到達し、それ以降の変化は小さい傾向がみられる。
  • 15~18か月間(25~28か月齢まで)肥育した成績(表3)は,輪換放牧区において,18か月間肥育後屠畜予定牛1頭の事故による廃用のため,平均肥育期間が短く体重も小さかったものの,枝肉の格付等級などでは区による差がなく,また一般市場の成績と同水準とみなされる。
  • 以上のように,3か月齢から放牧育成しても,産肉成績が粗飼料多給育成牛あるいは一般市場での現状に比べて大きく劣ることはなく,出荷適期は25~28か月齢と,6か月齢頃で入牧する場合より早く,しかも現状の交雑種牛と比べてもけっして遅くないことが明らかになった。このことから,交雑種子牛の人工哺育終了時から子牛市場出荷時までの放牧育成は,産肉性を低下させずに低コスト・省力化を図る上で有用と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 人工哺育終了時という従来より早い月齢からの放牧育成が,交雑種牛肥育体系において有用であることが示され,放牧利用の拡大につながると期待される。
  • 異常気象の年でも放牧時の発育速度が極端に低下しないように,干ばつ・暑熱対策が草地・家畜管理両面で必要である。また育成方式としての輪換放牧と連続放牧の優劣は,現時点では明確でない。

具体的データ

表1 各育成方式による交雑種去勢牛の育成期 1日当たり平均増体重

図 各育成方式後の肥育期における体重、枝肉重量及び枝肉歩留の変化

表2 各育成方式後の肥育期における格付等級の変化

表3 育成方式別の主な肥育成績

その他

  • 研究課題名:肥育素牛の低コスト育成技術の開発(F1去勢牛の放牧飼養と産肉性)
  • 予算区分 :経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成3~8~10年度)
  • 研究担当者:青木康浩,中西直人,山田知哉,山崎敏雄
  • 発表論文等:3か月齢からの放牧飼養による交雑種去勢牛の育成成績,34回肉用牛研究会 大会講演要旨,34-35,1996
                      3か月齢からの放牧育成後における交雑種去勢牛の肥育成績,94回日本畜産 学会大 会講演要旨,48,1998.