昆虫病原性糸状菌Beauveria bassiana を培養した紐によるイエバエ成虫の防除

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

昆虫病原性糸状菌Beauveria bassianaを培養した紐をイエバエの発生場所の上部に張っておくことにより、これに静止したイエバエ等の成虫は感染して死亡する。

  • 担当:草地試験場・環境部・害虫制御研究室
  • 連絡先:0287-37-7557
  • 部会名:永年草地・放牧
  • 専門:飼育管理
  • 対象:昆虫類
  • 分類:研 究

背景・ねらい

畜舎内に発生するハエ類の防除は薬剤によるものが主体であるが、ハエに薬剤抵抗性を生じさせ、薬剤を散布しても防除できない事例が多くなっている。そこで、薬剤以外の防除法として、昆虫病原性糸状菌Beauveria bassianaによる防除法の開発を試みた。

成果の内容・特徴

  • 昆虫病原性糸状菌 Beauveria bassiana は、20°C以上の温度でイエバエ成虫に分生子濃度1x107個/mlを接種した場合に、100%の死亡率となる高い病原性を示した。 接種の濃度が高いほど、成虫の生存期間は短くなった(表1)。本菌はサシバエ成虫に対しても同様に高い病原性を示すことが確認されている。
  • 米糠を塗して高圧蒸気滅菌し、B.bassianaを培養した黄麻の紐を網室(2x2x2m)の上部に張り、成虫の餌と幼虫の生育場所を用意し、繁殖状態にある成虫を放飼した。 イエバエ成虫は実験期間中に3世代発生し、糸状菌を培養した紐を張った区では、1世代目は比較的個体数が多かったが、その後の発生は極めて少数であった(図1)。これに対し対照区では、9月上旬から中旬にかけての発生は比較的少なかったが、下旬からは再び増加した(図1)。イエバエ成虫は夜間にB.bassianaを培養した紐に静止し、主にその間に感染して死亡したと考えられる。
  • 処理区のイエバエ飼料中の蛹数は、無処理区の約14.7%に過ぎなかった(表2)。
  • 以上のことから、病原性糸状菌を培養した紐をイエバエの発生場所に張る方法は、イエバエの防除法として有効な手段と考えられる。

成果の活用面・留意点

  • イエバエ防除の有効な方法となる。
  • 開放環境や他の静止場所が多いと、十分な効果が得られないことがある。

具体的データ

表1 Beauveria bassianaの接種濃度と接種後のイエバエ成虫の飼育温度がイエバエ成虫の死亡率と生存期間に及ぼす影響

図1 昆虫病原性糸状菌B.bassianaを培養した紐を張った網室におけるイエバエ成虫数

表2 網室における成虫放飼後から試験中止までにイエバエ飼育用飼料で蛹化した蛹の数

その他

  • 研究課題名:生物特性を利用した衛生害虫の発生制御技術の開発
  • 吸血性家畜害虫サシバエの天敵微生物による防除
  • 予算区分 :総合的開発(家畜排泄物)・経常
  • 研究期間 :平成10年度(平成6~11年度)・平成9年度
  • 研究担当者:神田健一・奥村隆史