毛色関連遺伝子の多型情報を用いた「黒豚」肉の識別

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要約

毛色関連遺伝子MClR第2膜貫通領域付近及ぴKIT遺伝子第16エキソンカら第19エキソン領域の遺伝子多型情報を用いて、バークシャー種(黒豚)、西洋白色種(ランドレース種、大ヨークシャー種)、デュロック種、梅山豚を識別することが可能である。

  • 担当:畜産試験場 育種部 遺伝子機能研究室
  • 連絡先:0298(38)8662
  • 部会名:畜産
  • 専門:育種
  • 対象:豚
  • 分類:行政

背景・ねらい

最近、スーパーでは「黒豚」の表示を多く見かけるようになったが、消費者等から「本当の黒豚であるか疑問」「出荷量に比べて黒豚が氾濫しすぎている」、ま た「ランドレースなどと交配すると白い豚になる。黒豚が血統に入っていても、白い豚を黒豚と表示するのはどうか」といった意見があがっていた。このため農 水省では「黒豚」についての意見を公募し、その定義(表示)を、純粋バークシャー種同士の交配による産子、とすることとした。ここで、食肉になった段階で 純粋バークシャー種であることをどのように知るかが問題となっていた。畜産試験場とSTAFF研究所との交流共同研究「毛色遺伝子等による豚の品種判別」より得られた成果はこの問題の解決に活用できる。

成果の内容・特徴

  • 試料中のDNAを抽出し、HClR(メラノサイト刺激ホルモンレセプター)遺伝子の制限酵素切断長多型を測定することによりデュロック種、梅豚豚、西洋白色種(ランドレース種及ぴ大ヨークシャー種)を識別することが可能である( 図1 )。しかし、MClR遺伝子の情報のみではバークシャー種と西洋白色種の識別はできない。
  • KIT遺伝子の多型情報を用いればバークシャー種と西洋白色種の識別が可能である( 表1 )。
  • 生肉およびハム・ソーセージ約0.29、あるいは血液を試料として検査することができる。

成果の活用面・留意点

  • 食肉試料について本検査を行うにはサーマルサイクラー(P CR機)・電気泳動装置等が必要である。
  • 外国におけるバークシャー種では、KIT遺伝子イントロン部分で西洋型と認識される個体がある。

具体的データ

表1 RFLPに用いたMCIR遺伝子およびKIT遺伝子の多型部分と制限酵素による識別

図1 制限酵素HhaI、MaeII、NlaIIIを用いた制限酵素切断長多型にひょる豚の品種識別

その他

  • 研究課題名: 毛色遺伝子等による豚の品種判別
  • 予算区分: 経常(交流共同)
  • 研究期間: 平成11年度(平成10~12年度)
  • 研究担当者: 畜試(三橋忠由、安江 博、大石孝雄)、STAFF(奥村直彦、中島恵美子、両角岳哉、鈴木秀昭、横島紀之)
  • 論文: 奥村直彦、鈴木秀昭、両角岳哉、濱島紀之、三橋忠由.ブタ品種間に認められるMClR遺伝子及びKIT遺伝子の多型.(日畜会報印刷中).
  • 学会発表: 嚢村直彦、中島恵美子、福島仁司、両角岳哉、鈴木秀昭、濱島紀之、三橋忠由.毛色関連の遺伝子を用いたブタの品種推定法.(1999)第96回日本畜産学会.
  • 特許: (1999,6,11)DNA配列多型による豚の品種識別法.発明者:三橋忠由、奥村直彦(特願平11-165269).
    畜産大賞技術部門最優秀賞:家畜ゲノム研究プログラムチーム・遺伝子利用技術開発グループ.毛色関連遺伝子のDNA多型を用いた豚の品種識別技術.