セルロース分解菌Fibrobacter succinogenesのセルロース結合性タンパク質の構造解析

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要約

牛の第一胃に生息するセルロース分解菌Fibrobacter succinogenesセルロース結合性タンパク質1はC末端側にセルロース結合部位、N末端側にエンドグルカナーゼ活性部位を持つ。

  • 担当:畜産試験場 栄養部 消化管微生物研究室
  • 連絡先:0298(38)8660
  • 部会名:畜産
  • 専門:動物栄養
  • 対象:家畜類
  • 分類:研究

背景・ねらい

ルーメン細菌の固形基質への付着は、ルーメン細菌が基質へ接近するための重要な手段である。同時にルーメン微生物生態系で有利な生態的地位を確保するための重要な要因でもある。ルーメン内の主要なセルロース分解菌であるFibrobacter succinogenesで はセルロースへの付着に関与すると考えられるセルロース結合性タンパク質1(Cellulose-binding protein 1, CBP1)が知られている。CBP1をコードする遺伝子はクローニングされ塩基配列も決定されている。しかし、CBP1のセルロースへとの結合を担う領域 (cellulose-binding domain, CBD)は不明であったことから、このCBDを明らかにした。

成果の内容・特徴

  • CBP1をコードする遺伝子を種々の大きさの断片に分割して発現用ベクターに挿入して発現用プラスミドを8種類作製した。こ れらの発現用プラスミドで大腸菌を形質転換して目的のタンパク質を(His)6ペプチドとの融合タンパク質として得てセルロース結合活性とエンドグルカ ナーゼ活性を調べた。
  • エンドグルカナーゼ活性は、N末端側のアミノ酸番号600-1053にあり( 図1 )、かつglycosyl hydrolase family 51に属するアラビノフラノシダーゼと高い相同性を示す。
  • C末端側にある繰り返し配列1(R1)を含むタンパク質がセルロース結合活性を担う( 図1 )。この繰り返し配列は、既知のCBDと相同性のない新規のCBDである。
  • Clostridium thermocellum F1のCelJにはFibrobacter succinogenesのCBP1の繰り返し配列と高い相同性を示す領域がある( 図2 )。

成果の活用面・留意点

以上によりCBP1のCBDが新規のCBDであることが明らかになった。本成果は活性の高いセルロース分解酵素の創出に活用できる。一方、Fibrobacter succinogenesのCBP1に含まれるCBDのセルロースへの結合様式は未知であり、解明する必要が残されている。

具体的データ

図1

 

図2

 

その他

  • 研究課題名:セルロース結合性タンパク質の構造および発現機構の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9~11年度
  • 研究担当者:三森真琴・大桃定洋・梶川博
  • 発表論文等:
    1.反芻動物の第一胃内に生息するセルロース分解菌Fibrobacter succinogenesの特性-セルロースへの付着を中心として-、日本細菌学雑誌、52(4),719-726 (1997).
    2.Identification of the cellulose-binding domain of Fibrobacter succinogenes endoglucanase F. FEMS Microbiol. Lett.,183,99-103 (2000)